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【質問】 腰から臀部にかけ脱力感

 56歳の女性です。足がよくつり、足先がしびれて悩んでいます。2年ほど前に腰痛にかかり、整形外科と接骨院に通ったことがあります。腰痛は治まったのですが、そのころから度々足がつるようになり、痛くてじっとしていられません。就寝中でも突然つります。寝るときには、冷やさないようにしていますが治まりません。また、腰からおしりにかけて、立っていられないほどのだるい感じがあります。一生治らないのでしょうか。それとも、ほかに悪い所があるのでしょうか。



【答え】 足のつり -漢方薬が即効性あり有用-

森本整形外科 院長 森本 博之(徳島市津田本町4丁目)

 「足がつる」というのは、不意に襲ってくる足の筋肉のけいれんです。ふくらはぎ(こむら)に頻発することから「こむら返り」とも呼ばれています。運動時とか、筋肉が疲労した日の夜間に起こりますが、高齢者では特別な原因もなくつることがあります。

 病気の症状の一部であることもあります。たとえば血液中の水分不足、カルシウムなどの電解質のアンバランス、各種ビタミンの欠乏、肝硬変などの内臓の病気、筋肉、神経の病気などが挙げられます。ただし、このような病気で必ず足がつるというわけではありません。

 あなたの場合、ご質問の内容から坐骨(ざこつ)神経痛が疑われます。その原因が腰にある場合を述べます。

 背骨は24個の椎(つい)骨が縦につながって身体を支えています。椎骨の前の部分が椎体で、椎体と椎体の間に椎間板という軟骨を挟み、その後方は脊(せき)柱管というトンネルになっています〈図参照〉。

 ヘルニアとは飛び出るという意味で、腰の椎間板ヘルニアとは椎間板が腰の脊柱管の方へ飛び出た状態をいいます。ヘルニアが腰の神経を圧迫すると、神経痛が起こります。これを根性(こんせい)坐骨神経痛といい、腰痛のほか、足の痛み(おしりからももの後面、ふくらはぎの外側など坐骨神経に沿った痛み)、足のしびれ、脱力などをきたします。

 脊柱管は、年齢とともに狭くなりますが、背骨のズレや椎骨の変形が加わると、内部を通る神経は圧迫され、脊柱管狭窄(きょうさく)症を起こします。椎間板ヘルニアが20~30歳代を中心に起こるのに対し、腰の脊柱管狭窄症は50歳代から急増します。症状は、歩くと足の痛み、しびれ、脱力などを覚え、そのうちに一歩も歩けなくなりますが、しばらく休憩すると再び歩行可能となります。この特徴的な症状を間けつ性跛行(はこう)といいます。

 治療法について述べます。

 「足がつる」という症状だけを取り除くには、漢方薬、中でも芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)は即効性があり、有用です。

 坐骨神経痛の治療には、安静、消炎鎮痛剤などの薬を用いますが、症状によってはコルセットの着用やけん引療法、腰痛体操なども行います。こうした治療で効果がみられないときは、最後の手段として手術が必要となります。飛び出した椎間板を摘出したり、狭くなってしまった脊柱管を広げるなど、手術にはいろいろあります。

 最近は「病診連携」が確立し、お近くの診療所と設備の備わった病院が共同で、一貫した検査、治療も行われています。もう一度、整形外科の受診をお勧めします。

徳島新聞2000年4月30日号より転載

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