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【質問】 足の爪が指に食い込み痛む

 62歳の主婦です。足の爪(つめ)のことでお尋ねします。左足の親指の爪の端が身に食い込んで、触っても靴をはいても痛くて困っています。爪を短く切って痛みを和らげているのですが、しばらくするとまた痛み出します。爪を「長く伸ばすといい」とか、「短く切ればいい」とかよく聞きますが、どれほど効果があるものか分かりません。内科の先生にも尋ねたのですが、どうしようもないと言われました。自分でどういう処置をすればいいのか、何科を受診すればいいのか教えてください。爪は短く切った方がよいのでしょうか。



【答え】 陥入爪 -深爪避け清潔保つ-

小松島赤十字病院 形成外科部長 長江 浩朗

 ご質問の症状は陥入爪(かんにゅうそう)といわれる状態から生じたものと思われます。まず、陥入爪について少し話してから、あなたの治療についてご説明いたします。

 爪は、爪母(そうぼ)と呼ばれる爪の根っこの下の部分の細胞が増殖することでつくられます。根っこに少し見える白い部分は爪半月と呼ばれ、爪母の一部です。爪母以外の爪の下にある組織は爪床と呼ばれます。

 陥入爪は、何らかの原因で爪が横の皮膚にめり込んだ状態で、ほとんどは足の親指にみられます。その原因としては、生まれつきの爪の形の異常のほかに、不適当な靴による圧迫、足の指の不衛生、深爪、外傷や手術などによる抜爪などが考えられます。実際にはいろいろいな原因が重なって起こることが多いようです。

 症状の程度も痛みだけのものから、化のうした状態が続くもの、爪の先が巻き込んだようになったいわゆる「巻き爪」までさまざまです。

 さて、治療の方法ですが、症状が軽い場合は、先ほど話した原因を取り除くことで良くなることも期待できます。つまり深爪をしないようにし、爪の先の白い部分が見えるまで伸ばすこと、足の指先を圧迫するような爪先の細い靴、小さい靴などをはかないようにすること、最低、日に1回は足をせっけんで洗い、清潔に保つことです。炎症を起こしていて、少々痛みがあってもよく洗ってください。

 それでも良くならない場合や、症状が強い場合は、手術による治療ということになります。何らかの方法で、皮膚に食い込んでいる部分の爪が生えてこないようにするわけです。

 先ほど話したように、爪は爪母からつくられますので、爪母に処理を加えます。よく行われる方法に、爪母を切り取る方法とフェノールという薬剤で爪母の細胞を壊死(えし)させる方法があります。どちらもまず指の根元に注射をして麻酔を利かせてから、指の根元をゴムのようなもので縛り、血が出ないようにして食い込んでいる部分の爪だけを抜きます。そして露出した爪母を切り取るか、薬剤で処理します。

 フェノール法では、メスを入れたり縫合したりすることがないので、術後の痛みが少なく、翌日から入浴でき、安静もあまり必要ないという長所があります。しかし壊死組織が残った状態になりますので2~3週間、自分で消毒するなどの簡単な処置をしたいただく必要があります。どちらの方法でも、慣れた医師が行えば治療効果に差はないようです。

 変形が強い「巻き爪」の場合は、爪の周囲を逆U字型に切り、爪床を骨からはがして、平らにするような手術を行いますので、安静のため1週間程度の入院が必要となります。

 以前は症状を取るため爪を抜いていたようですが、根治せず、爪の変形を強くする可能性もあるため最近はほとんどされていません。

 あなたの場合は、軽い陥入爪と思いますが、お話ししたことに気をつけても症状が繰り返すようでしたら、フェノール法などの治療を試された方がよいかと考えます。受診する科は形成外科、整形外科、皮膚科になりますが、治療しているところは少ないと思いますので、問い合わせてから受診してください。

徳島新聞2000年3月12日号より転載

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