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【質問】 小2の息子の心臓に「雑音」

 8歳の小学2年生の息子のことでお聞きします。先日、校内マラソン前の健康診断で「心雑音がある」という通知を持ち帰りました。すぐにかかりつけの内科で受診したところ、「機能性雑音」で成長期にみられることもあり、心配はないだろう、とのことでした。マラソン大会は上位の成績で、サッカーチームにも入っており、活発に過ごしています。本当に心配はないのでしょうか。念のために心電図をとるなどの精密検査をしておいた方がよいでしょうか。息子は身長125cm、体重21.5kgで体は小さい方です。



【答え】 心雑音 -子供は「無害性」が多い-

徳島県立中央病院 小児科医長 湯浅 安人

 ご質問にお答えする前に、「心雑音」について少しお話をさせていただきます。聴診器で健康な人の心臓の音を聴くと、わずか1秒弱の1回の拍動のうちに、弁の開く時と閉じる時の2つの音が聞こえます。これ以外の音が加わって、心臓の音が濁って聞こえる場合を「心雑音がある」といいます。

 しかし、心雑音のすべてが病気ではありません。無害性心雑音といって、心臓の中に明らかな異常がないのに、弱い雑音が聞こえる場合があります。もちろん、この場合は異常がないのですから、なんら心配はありません。

 機能性心雑音も、心臓の中に異常がない点は同じですが、体が正常でない場合に聞こえる心雑音で、貧血、甲状腺(こうじょうせん)機能亢進(こうしん)症や発熱などの場合によく聞かれます。無害性心雑音と混同して、習慣的に両者とも同じような意味で使われているのが実情です。

 このように、心臓に異常がないのに心雑音が聞こえる健康な子供は、けっこう多いのです。無害性心雑音は乳児期にも聞かれますが、2歳ごろから増加し、学童期に最も多くなり、思春期以降は次第に減少します。つまり、成長につれて雑音が目立たなくなることが多いのです。

 報告者にもよりますが、静かな部屋で、平静な状態で聴診すると、幼稚園児や小学生の3~4人に1人ぐらいは聞こえるようです。私の経験でも同じぐらいだと思いますが、病気ではないので、あえて患者さんには説明していません。

 さて、ご質問への答えですが、心雑音が機能性あるいは無害性で、心臓の中に異常がないのなら、心配する必要はありません。子供の心音を日ごろよく聴診している医師なら、聴診器だけで病的な心雑音と無害性心雑音の区別がかなり正確に分かります。あなたの息子さんも、文面からはあまり心配する必要はなさそうです。

 なお、県内のほとんどの小学生は、1年生のときに心電図検査を受けますが、このときに異常を指摘されていないのなら、なおさら安心でしょう。もし心電図検査を受けていないのなら、念のために一度ぐらいは検査しても悪くないと思います。

 ところで、心電図以外の心臓病の検査には、レントゲン写真、心音図、超音波検査、運動負荷心電図や24時間心電図などがあります。ところが、日本大学医学部小児科の調査によると、1989(平成元)年からの5年間に学校安全会に報告された、全国の学校管理下での突然死例は439人で、そのうち生前に「突然死の可能性がある心臓病」が分かっていたのは157人、わずか35.7%でした。

 先に述べたような検査で、非常に軽い心臓病や大変珍しい心臓病が見つかることもありますが、ときどき新聞などで見かける「運動中の突然死」の予測、予防は、残念ながら限界があることも事実です。

 従って、お尋ねの「本当に心配はないのでしょうか」という問いには「たぶん、大丈夫でしょう」というのが、私を含む小児科医の正直な返事ではないかと思います。

徳島新聞2000年2月20日号より転載

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