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【質問】 全身にかゆみ、かくと赤くミミズばれに

 今年3月に約10数年間勤務していた職場でリストラに遭い、そのころから全身のかゆみが始まりました。体中がかゆくてかゆくて、かくと赤くミミズばれになります。病院でじんましんと診断され、現在抗アレルギー剤を飲んで抑えていますが、治る気配がありません。じんましんはホルモンバランスの崩れによって、起こるのでしょうか? いつ治るか分からないので不安です。薬の副作用はないと聞いていますが、妊娠すると薬が飲めなくなるので悩んでいます。良い治療法があれば教えてください。



【答え】 人工じんましん -80%の人は飲み薬で治癒-

徳島市民病院 皮膚科医長 内田 尚之

 ご質問の内容からすると、人工じんましんと思います。普通のじんましんと違い、人工じんましんはかゆくて、体をかくことにより、膨疹(ぼうしん=赤いミミズばれ)ができるじんましんです。

 人工じんましんを引き起こす病気を〈表〉に示しました。あなたの場合は、なかなか治りにくいようですので一度他に病気がないかどうか、検査してもらってください。

人工じんましんを合併する
病気


[1]虫の反応
  寄生虫感染症
  虫刺症

[2]精神、神経性疾患

[3]ホルモン異常
 甲状せん疾患
  妊娠
  更年期
  糖尿病

[4]免疫学的異常
  急性じんましん後
  薬剤
  接触皮膚炎局所

[5]その他
  肥満細胞症
  他のじんましん
  血管神経性浮しゅ
  その他

人工じんましんは一般的に慢性化し、数カ月からときには数年間続きます。それで、あなたが悩まれているような長い経過をとることになります。あなたの場合も、薬を飲んでいる間はかゆくないが、薬を中止するとかゆくなるということを繰り返しているのだと思われます。現在、飲まれている薬は、効果があるようですので、続けられてはいかがですか。時間はかかりますが、必ず治ると思います。

 慢性になったじんましんの約80%は原因が分からないといわれていますが、原因となる可能性のあるものとして、<1>薬剤<2>食物や食品添加物<3>環境因子<4>感染、寒冷、温熱などの物理的因子<5>内臓疾患<6>心因性因子-などが考えられています。

 食物は卵(卵白)、小麦(めん類、お菓子)、豆類(みそ、しょうゆ)、魚介類(青魚)、チーズ、果物、野菜など、食品添加物は人工着色料、サリチル酸誘導体(じゃがいも、リンゴなどの野菜や、果物にも含まれています)などが原因となります。しかし、これらの食品添加物は簡単に検査できないのが現状です。

 環境因子としてはダニ、ほこり、カビ類、花粉、動物のフケなどがあります。環境因子や食物は血液検査が可能です。また、ストレスが加わり、自律神経や免疫系に影響を及ぼして、じんましんを発症する場合もあります。あなたの場合はこれに当たるかもしれません。
 じんましんの治療法には、<1>原因の除去<2>抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤の内服(治りにくい場合は、副じん皮質ホルモンの内服や注射)<3>非特異的療法-などがあります。

 原因を除去できれば一番いいのですが、先にも述べたように、原因が見つからないことの方が多いのです。それで、一般的な治療は、抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤の飲み薬で行います。効果のある薬を治るまで飲んでください。80%以上の人はこれらの薬を飲むことにより治ります。

 抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤は比較的副作用が少なく、安全な薬です。ときに眠気やけん怠感を感じる人がいます。その場合は薬の種類や服薬量を変えることにより、軽減できます。

 その他の治療法としては、非特異的刺激療法(免疫系を活発化し、アレルギー状態を原因物質に関係なく抑える)、ヒスタミン加ヒトガンマグロブリン製剤の注射(血液から採ったグロブリンとヒスタミンを合わせた注射。ヒスタミンを抑える作用がある)、漢方薬療法などがあります。

 あなたに合った他の治療法があるかもしれません。一度、主治医の先生に相談されてはいかがですか。

徳島新聞1999年12月19日号より転載

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