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【質問】 ポリオ感染の恐れは・・・

 24歳になる私の娘は、生後4カ月のときに下痢止めの薬でじんましんが出たため「予防接種は待ちましょう」と言われ続け、結局、幼児期の予防接種は何もできていません。現在までの病歴は、弱いぜんそくがあり、気管支炎でたびたび吸入をしたこともありましたが、6歳で三日ばしか、小学校入学前におたふく風邪にかかったくらいです。先日、ポリオの抗体がないと、予防接種を受けた子どもからの感染がまれに起こると報道されていました。保母をしている娘は気にしています。どのように対処すればよいでしょうか。



【答え】 予防接種 -アレルギー次第ではOK-

徳島大学医学部 助教授 伊藤 道徳

 ポリオは、感染した人の便中に排せつされたポリオウイルスが口に入ることによって感染します。このウイルスに感染しても、約90~95%の人は何の症状も出ずに免疫ができます。しかし感染した人の0.1~0.5%の人に麻痺(まひ)が現れ、永久に麻痺が残ったり、呼吸困難によって死亡したりすることのある病気です。

 日本では1972年以来、「野生強毒ポリオウイルス」は認められていません。しかし、東南アジアなどではまだこのウイルスによる患者が報告されています。現在、ポリオの予防接種には野生強毒ポリオウイルスの毒性を弱めた弱毒ポリオ生ワクチンが使用されています。

 予防接種を受けた子供たちからは、ポリオワクチンウイルスが便に排出されます。このワクチンウイルスの弱められた毒性が、再び強い毒性を持つようになる場合があり、この強い毒性を持ったウイルスが、免疫を持たない人に感染してポリオを発症する可能性があります。

 日本では、免疫を持っていない家族などが、ポリオワクチンの接種を受けた子供から感染し、麻痺をおこしたという例が、約500万回の投与に1人の割合であるといわれています。

 このため免疫を持っていない人は、東南アジアなどのポリオ常在国へ行く場合や、お子さんがポリオワクチン接種を受ける場合に、予防接種を受けることが勧められています。

 ご相談者のお嬢さんの場合、これまでポリオワクチンの接種を受けていませんから、ポリオに対する免疫はできていないと考えられます。また保母さんという職業柄、ポリオワクチンの接種を受けた子供たちと接する機会も多いと思います。

 下痢止めのお薬でじんましんが出たために、乳幼児期に何も予防接種を受けていなかったとのことですが、ポリオワクチンに含まれる成分(白糖、フェノールレッド、ゼラチン、ストレプトマイシン、エリスロマイシン)で重篤なアレルギー反応を起こしたことがなければ、ポリオワクチンの接種を受けることに特に問題はありません。

 ポリオワクチンを受けた子供から感染して麻痺を発症する危険性は低いものの、できるだけポリオワクチンの接種を受けた方がよいのではないかと思います。

 また破傷風や、はしかなど、これまでにかかっていない病気で予防接種のあるものについても、できるだけ予防接種を受けるのがよいと考えます。

 予防接種を受ける場合、個々の予防接種の副作用など、不安なことや疑問点については予防接種担当の医師とそのつどご相談なさってください。

徳島新聞1999年11月21日号より転載

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