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【質問】 激しい寒気と汗がひどい

 66歳の女性です。3年前から自律神経失調症といわれ、薬を飲み続けていますが、いっこうに治らず死を何度も考えたくらいです。病状は、夏というのに冬の衣類を着込むほど寒気が激しく、のぼせもあり、体中がかっかとほてってひどい汗が出てきます。病院で汗止めをもらっているのですが、このごろは全然効きません。風に当たったり、テレビを10分ほど見ていても気分が悪くなり、汗がどっと出るのです。最初の流産をした30歳のとき、高熱が出て、震えがきたのです。激しい寒気は、ふとんをかけても治らず、逆に起き上がれば汗がたらたら出てきたのが始まりです。昔は産後の血の道といわれていたそうですが、今は自律神経失調症というと医師から聞きました。あまりにも治らないので、良いアドバイスをお願いします。



【答え】 自立神経失調症 -不安定な交感神経の働き-

富本医院 院長 富本 浩明(麻植郡山川町堤外)

 お手紙を拝見したところによると、あなたの症状は周りの気温や体温に関係なく、非常に寒く感じたり、暑く感じたりすることのようで、それが30年以上続いているとのことです。さぞかしうっとうしく苦しいことでしょう。

 通常、人の体温は35度から37度程度に保たれていますが、寒い環境にさらされて、体温が一定の温度以下になりますと脳の体温調節中枢が働き、全身の筋肉が細かく震え、それによって急速にブドウ糖や脂肪が燃焼されて熱が発生し体温を上げます。

 これと同じことは、体の中にばい菌やビールスが入った場合にも起こり、体温は38度以上の高熱となります。このとき自覚症状としてはゾクゾクとする悪寒を感じます。

 逆に暑い環境の中で、体が一定の温度以上に温められると、皮膚の血管が開いて、血流が増えると共に汗が出て、その汗の蒸発によって体を冷やし、体温を下げるのです。昔、結核がまん延していたころには、寝汗は結核の兆候として気味悪がられていました。それは、結核になると、夕方熱が出て、夜、汗をかいて体温を下げていたのです。

 また汗は恐怖や苦痛などに際しても出てきます。精神性発汗と呼ばれます。いわゆる冷や汗です。このような発汗や体温調節は交感神経という自律神経の働きによって行われます。

 あなたの場合、今述べたような体温の変化を引き起こす要因がないのに、体温が上がったり、下がったりするときのような自覚症状があるので、やはり交感神経の働きが不安定になっているのでしょう。それではこのような症状を引き起こす原因は何でしょうか。

 交感神経系自体の病気では、その働きが単純に衰えてしまい、汗が全く出なくなるとか、非常な低血圧になって、起き上がると脳貧血で倒れてしまうなどのひどい症状がでます。

 あなたのような自律神経の働きの不安定な症状の原因は自律神経系以外にあると思います。ゾクゾクしたり、上気したりは更年期障害の典型的な症状ですが、あなたの場合は年齢と症状の持続期間からそうではないようです。

 そのほか、精神的な要因、たとえば、神経質な性格とか、不安神経症、軽いうつ病が原因となってあなたのような症状を表す人も多いように思います。そのような人では、不快なことに敏感になっていて、ほとんどの人が気にも止めないようなわずかな痛みなどにもこだわり、そのこだわりによって感覚がさらに鋭敏になり、苦痛も大きくなるという悪循環が形成されるようです。

 人はみな周りの気温の変化に対して、常に体温の微調整をしており、それに伴い、意識しない程度のゾクゾク感はあるものと考えられますが、あなたはそれを敏感に感じるのではないかと思います。そうだとすれば、あなたのかかるべき診療科は心療内科でしょう。一度、心療内科の門をたたいてみてください。

徳島新聞1999年10月17日号より転載

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