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【質問】 学校でおなかが痛くなる

 中学3年生の息子の腹痛のことでお尋ねします。小学校高学年のころから時々、学校でおなかが痛くなると言い始め、中学校入学直後からは朝起きるなり、腹痛を訴えています。病院では起立性調節障害という診断です。本で調べると、成長するにつれて治ると書いてありますが、完治するのでしょうか。来年は高校生でもあり、心配しています。



【答え】 起立性調節障害 -間食控えて便通整えよう-

高橋小児科 院長 高橋 洋三(徳島市中島田町2丁目)

 小学校高学年のころから3年以上、腹痛が続いているとのことです。既に病院で「起立性調節障害」と診断され、長期欠席もなく、高校に進学しようかという状況のようですから、基本的には心配のない腹痛と思います。

 一般に、小児の腹痛は、急性腹痛と反復性腹痛とに分けて考えます。急性腹痛には内科的疾患と、緊急に外科的処置が必要な急性腹症があります。これらの区別は大切ですが、その判断が難しい場合もあります。質問から見て、お子さんは反復性腹痛と考えられます。

 反復性腹痛は男女とも5歳ごろから多くなり、ほとんどの人がへそのあたりの痛みを訴えます。ただ、痛みのため、夜に目が覚めるほどではなく、朝食の前後に痛くなることが多いようです。

 痛みはほとんど毎日ある場合や、週1~2回の場合もあり、いずれも1~2時間以内に治まるようです。腹痛のほか、顔色が悪かったり、ムカムカして食欲がなく、頭痛やめまいを訴えたり、微熱があって何となく元気がなく、便秘がちであったりします。嘔吐(おうと)や下痢はないようです。

 こうした症状の子どもたちは、過保護に育った甘えん坊のタイプか、まじめでやや神経質なタイプに分けられるようです。また、家族の中にも、反復性腹痛や消化性かいよう、片頭痛を訴える場合があるようです。

 反復性腹痛の原因はたくさんあります。胃腸だけでなく、肝臓・胆道、腎臓・ぼうこう、中枢神経、代謝性疾患などの器質的障害によるものと、機能性(身体的原因が見つからない)の腹痛があります。このうち、器質的障害によるものは、わずか1割で、残りの9割は機能性の腹痛だといわれています。この機能性腹痛の原因の一つに「起立性調節障害」があります。

 「起立性調節障害」は自律紳経の失調のため、起立という行動に対して血管反射が不十分で、下半身に血液がたまり、循環血液量が減少するためにさまざまな症状を示すといわれています。

 休日には痛みがなくなったり軽くなったり、腹痛のほかにいろいろな不定愁訴があったり、腹痛とは無関係に眠れなかったり、不登校であったりする場合には心理的な原因も考えられます。この場合、痛がり方が大げさなことがあります。診断には他の器質的疾患を除外しなければなりませんが、特に心因性の場合に身体面のチェックだけを重視し過ぎて、あまり過度な検査を行うと、かえって症状を悪化させることがあります。

 そこで、自律神経の失調による体質的なもので、一定の年齢層になれば、自然に消える心配のない腹痛であることをお子さんに話してあげて自信を持たせてください。さらに、規則正しい食事習慣と間食を控え便通を整えることが大切です。痛みの強いときは温かくして安静にし、特に痛みがひどいときには、かかりつけの医師に投薬してもらいましょう。

 薬物療法とともに、鍛錬療法(乾布摩擦、冷水摩擦、積極的な運動)が治療効果を高めます。かかりつけの医師とよく相談し、1日も早く回復されるようお祈りします。

徳島新聞1999年8月1日号より転載

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