徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

【質問】 ホルモン注射

 61歳で出産経験はありません。15年ほど前から冷え症、頭痛、のぼせなどがあり、内科医を受診して漢方薬などを飲んできました。でも、症状は改善されず、6年前から産婦人科で、月1回のエストロゲンホルモン注射と、毎日1回の服薬治療に切り替えたところ、次第に症状は軽くなっています。ところが最近、エストロゲンには、乳がんなどの副作用があると知り、怖くなって2カ月くらい注射をやめています。ホルモン注射には、どんな副作用があるのでしょうか。また、ホルモン注射を中止すれば、以前のような症状が出てくるのでしょうか。また、ホルモン注射を続けるとすれば、何歳くらいまで続けなければならないのでしょうか。



【答え】 治療の副作用 -月1回程度なら大丈夫-

勝とき産婦人科 院長 寺内 弘知(徳島市中昭和町2丁目)

 エストロゲンホルモンは、エストロゲン依存性の悪性しゅよう(乳がん、性器がんなど)や、その疑いのある患者さんには、しゅようを悪化させることがあるので、投与してはいけないことになっています。

 そのほか、血管内で血液が固まって固形物となる血栓(けっせん)性の静脈炎や肺栓塞(せんそく)症、さらにその経験のある人も、血栓のできる傾向が強まるため投与できません。子宮内膜症やその経験のある人も症状が悪くなる恐れがあるので、投与を控えなければなりません。

 ただ質問にあるように、月1回程度の注射では、副作用の出る可能性はそれほどきいとはいえないと思います。

 一般的にホルモン治療は、エストロゲン単独よりも、男性ホルモンや黄体ホルモンを混ぜた注射や、内服薬を出して治療することの方が多く、その方が副作用が少ないと考えられているようです。

 以前あったという冷え性や頭痛、のぼせなどの症状が、ホルモン注射を止めると出るかどうかは予測が難しく、経過を見られたらよいのではないでしょうか。

 もし症状が出てくるようなら、もう少しホルモン治療を受けてもよいでしょう。幸いなことに、人間の体は体内の色々な状況や外部の環境に慣れてくる特性を持っています。

 例えば、酸素の希薄な高地で住んでいると、息苦しい症状などがだんだん薄れていきます。マラソン選手が高地でトレーニングをするのも、長時間の運動に耐える練習の一方法なのです。

 同様に、ホルモンが減ってきた状態にも体はだんだんと慣れていきます。あなたの年齢からすると、閉経からだいぶ月日が経過していると思います。

 従って、ホルモン注射をしなくても、体がもう慣れてきていて症状が出ない可能性も十分ありますから、もう少し経過を見るようにお勧めしたわけです。

 何歳までホルモン注射を続けるのかという問題ですが、これははっきりと決まったものはありません。閉経そのものが、人によって40歳前半から長い人で55歳くらいまでと10数年の開きがあり、症状も個人差がとても大きいからです。

 何歳で閉経したのか書かれていないのでよく分かりませんが、もしどうしても必要があれば、あと数年くらいはホルモン注射を受けられてもよいかと考えます。しかし、子宮がんと乳がんの検診は毎年必ず受けてください。

 これからは、色々な成人病が出てくる年齢でもあります。時にはその方の検査も必要ですし、ほかに大きな病気がなければ、適当な運動を続けられることをお勧めします。運動をすることで、成人病にも更年期の症状にもよい影響が出ると思います。

徳島新聞1999年4月25日号より転載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.