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県民の皆さまへ

【質問】 たまに起こる動悸

 59歳の主婦です。31歳の娘のことでお尋ねします。中学校の時、校医から不整脈があるといわれ、マラソンの授業は休んでいました。その時の脈は、正常ならトントンと打つところ、トントトンと速く打っていたそうです。それから15年、何の異常もなく現在も脈は正常です。しかし、じっとしていても、たまに動悸(どうき)がするとのことで心配しています。娘は主婦業なので特に重労働はしていません。3児の母でもあり、最近、3歳になる長女の歯科検診の際に親子で歯をみてもたったところ、親知らずが3本もあり、抜いた方がいいといわれたそうです。心臓を調べてからの方がいいのでしょうか。私の母親は心筋梗塞(こうそく)で亡くなり、51歳の妹も糖尿病からの心臓病で手術をしています。遺伝的な要素もあるのかと気にしています。



【答え】 不整脈 -心臓の精密検査を-

三河循環器内科 院長 三河 浩一(徳島市南内町)

 結論としては、心臓の検査を受けてください。

 15年前の中学時代からトントトンと打つ動悸を自覚し、31歳になる現在まで、たまに動悸が出現しています。この間、3児を無事出産し、特に動悸の原因となる心臓病なども指摘されていません。

 しかし、動悸の原因となる不整脈の種類、その背景の病気によっては、経過観察や治療に必要も考えられるので、確定診断を受ける必要があります。心筋梗塞や遺伝的要因のある糖尿病との関連は少ないと思います。

 動悸は人それぞれの言葉で現され、本人の感受性によって大いに異なります。訴え方としては、動悸を感じる、トントンする、トントトンとする、のどがつった感じがする、心臓が1回止まった(休んだ)感じがする、心臓が躍る、心臓の拍動が早くなる、ふわーとする-などと表現します。

 動悸の原因としては、「洞(どう)不整脈」「心房(粗)細動」「発作性頻拍症(上室性・心室性)」「洞不全症候群」「?度・?度房室ブロック」など、心臓のリズムの異常によるものがあります。さらに、「大動脈弁閉鎖不全症」など1回の心拍出量の増加によるもの、甲状腺(せん)機能亢進(こうしん)症、貧血など心臓以外の病気によるもの、このほか精神的要因やアルコール、コーヒーなども原因になります。

 明らかに心臓などに原因がなく治療の必要のないものから、心臓などに原因がある有害な不整脈で、治療が必要とされ、死に至るものまであります。

 動悸として自覚する不整脈を診断するためには、既往歴や現病歴を確認して診察をするのは当然ですが、「安静時心電図」、24時間の心電図を記録する「ホルター心電図」、「運動負荷心電図」の検査をします。不整脈の背景にある病気診断のためには、必要に応じて心臓超音波検査や胸部エックス線検査、心臓電気生理的検査などを行い、心臓以外の原因が考えられるときは、それぞれの病気に対応した検査をして、診断します。

 ます初めに、安静時心電図で動悸の原因となる不整脈の種類を診断しますが、不整脈は記録ができるときと記録のできないときがあります。次にホルター心電図検査をすることにより、不整脈の有無や発生原因、発生頻度、種類、重症度などを診断することができます。

 さらに、運動などで動悸が現れ、安静時心電図で記録できないときは運動負荷心電図検査をします。運動時に記録されたり、増加する不整脈としては「心室性期外収縮」が最も多く、運動しても不整脈が増加しない場合は放置してもよいが、運動で増加する不整脈は治療の必要なときがあります。

 動悸は原因となる不整脈を診断し、その背景の病気を正しく把握することで、治療が必要かどうかが決まります。

徳島新聞1998年12月6日号より転載

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