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【質問】膝が痛み正座ができない

 60代後半の女性です。数カ月前に左膝の痛みで歩けなくなり、病院に行ったところ「変形性膝関節症」と診断されました。今は回復して歩けますが、正座ができなくなりました。これはどんな病気なのか、また、どういう治療やリハビリをすればよくなるのか教えてください。

 加藤整形外科クリニック 加藤憲治 先生

【回答】湯船の中でストレッチを

 変形性膝関節症は、関節面の軟骨が傷付いてすり減り、関節内に炎症や変形を引き起こすことで痛みを生じる疾患です。性別、加齢、生活習慣、肥満、外傷歴などさまざまな要因で発症します。多くはゆっくり進行しますが、経過中にリウマチ、骨壊死、脆弱性骨折、半月板損傷などとの区別が必要になることがあり、注意を要します。

 治療は病状に応じて鎮痛剤処方、ヒアルロン酸などの関節内注射、治療機器を用いた除痛、理学療法士によるリハビリテーション、サポーターや足底板(インソール)処方などを組み合わせて行います。残念ながら重症化してしまった場合でも、日常生活を取り戻すため、人工関節置換術という有効な手段があります。

 今回はご質問の内容から「発症初期の軽症例」と推察して、初期症状の特徴と自己管理法について説明します。まず、自分の立ち姿を鏡で注意深く観察してみましょう。若いころと比べてわずかに膝が伸びきらなかったり、O脚になったりしていませんか。痛みは立ち座りなどの動作開始時に気になり始め、徐々に階段昇降や正座がつらくなってきます。

 また、水がたまる(関節水腫)こともあります。一度すり減ってしまった軟骨は自然回復を望めないため、強い痛みや高度の変形に至る前に対処することが肝心です。

 この時期の治療は、痛み→活動性低下→筋萎縮→関節負荷増加→痛み増強という悪循環に陥ることを防ぐことが狙いです。まず肥満解消や体力強化ための基礎治療として食事管理、ストレッチ、プール歩行、自転車漕ぎなどを取り入れます。

 ウオーキングはクッション性の良いシューズを使用して30分以内にとどめましょう。ランニングやジャンプは避けるべきですが、痛みのない範囲の軽い負荷であればむしろ関節を動かす方がよいと思います。

 下肢の筋力を付けるための自己訓練法について、日本整形外科学会ホームページから一部を抜粋して転載しておきます(図参照)。要点は▽膝周囲に加えて体幹や股関節の補強を意識する▽膝をしっかり伸ばしきる▽できるだけスローな動きで持続的にしっかりと力を入れる-の3点です。

 最後に、お悩みの「正座ができない」ことについて、回復はなかなか困難ですが、お風呂の湯船の中で温めながら、膝を抱え込むように曲げ込むストレッチが効果的です。毎日根気よく続けてみましょう。

【写真説明】[上]<1>脚を伸ばして座る<2>膝の下に置いたタオルや枕を押す<3>5~10秒そのままでいる(息を止めない)<4>力を抜く[下]<1>横向きに寝る<2>上の脚を伸ばしたまま股を開くようにゆっくり上げる<3>5秒ほどそのままでいる(息を止めない)<4>ゆっくり下ろす
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