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【質問】処方された薬が効かない

67歳女性です。「後鼻漏(こうびろう)」と診断されて3年余りたちますが、処方された薬が効きません。透明で粘りのある鼻汁が喉にたまり、張り付いた感覚があります。エックス線やCT検査などでは異常はありません。霧状にした薬剤吸入や鼻洗浄も行いました。症状が慢性上咽頭炎と似ているそうですが、関係あるでしょうか? 良い治療があれば教えてください。

 

西條耳鼻咽喉科  西條秀明 先生

 【答え】内服薬の長期投与が効果
 
 3年余りも苦しまれ、大変だったこととお察しします。聞き慣れないとは思いますが、後鼻漏は「鼻汁が喉へ流れる」状態をいいます。正常でも1日2リットル近い分泌物が鼻腔(びくう)(鼻の穴の中)や副鼻腔(鼻腔周辺の空洞)で作られ、無意識に飲み込まれています。しかし、分泌量が極めて多くなったり、粘り気が増えたりすると、後鼻漏として感じるようになります。
 
 慢性的に後鼻漏が起こる病気を紹介します。まずは「慢性副鼻腔炎」。いわゆる慢性蓄膿(ちくのう)症で、副鼻腔に炎症が起こって粘性の分泌物が出ます。細菌感染を起こすと、膿(うみ)が出ることもあります。
 
 「アレルギー性鼻炎」および「血管運動性鼻炎」は鼻の粘膜が過敏になり、鼻汁が多くなる病気です。通常はさらさらの鼻汁が鼻の外へ流れ出ますが、感染やアレルギー治療薬の副作用で粘度が増すことにより、後鼻漏となります。
 
 「萎縮性鼻炎」とは、鼻粘膜などの萎縮が原因で、どろどろした黄色い鼻汁やかさぶたを伴います。鼻腔と喉の境目にある上咽頭に起こる炎症が「慢性上咽頭炎」。長期化しやすく、他の鼻の疾患から二次的に発症することもあります。
 
 「ソーンワルト病」は胎児期に体内にできる小さな管(鼻咽頭嚢(びいんとうのう))が消失せずに残り、炎症を起こす病気です。CT検査など画像で診断できます。
 
 後鼻漏の有無や症状、発生部位、原因などを調べるには内視鏡検査が有用です。分泌物を採取して細胞を検査すると、副鼻腔炎かアレルギー性鼻炎か、大まかに判断できます。アレルギー性鼻炎の疑いがあれば、血液検査でアレルゲンを調べることもあります。副鼻腔炎が考えられる場合、画像診断をして病変の部位や程度を確認します。
 
 さて、ご質問の文面だけで判断するのは難しいですが、症状や検査結果からアレルギー性鼻炎や萎縮性鼻炎は考えにくいでしょう。手術が必要なほど重い慢性副鼻腔炎やソーンワルト病も違うと思います。恐らく、後鼻漏の症状を主とした潜在的な慢性副鼻腔炎があり、二次的に上咽頭や咽頭の炎症が持続していることが考えられます。
 
 治療には▽血管収縮薬で鼻粘膜を収縮させ、鼻腔内にある粘液などを吸引する(鼻処置)▽鼻腔内の洗浄▽薬を霧状にして吸入(ネブライザー吸入)▽抗菌▽抗炎症作用などがある内服薬による保存療法(マクロライド少量長期投与療法)-などがあります。綿棒を用いて丹念に鼻処置をすることで、鼻洗浄やネブライザーの効果は高まります。
 
 マクロライド療法は内服薬の通常使用量の半分を3~6カ月にわたって毎日服用するもので、投与した方の約70%に効果がみられます。上咽頭炎には、水100ccに重曹1グラムを溶かした重曹水でうがいすることをお勧めします。重曹水は長時間放置すると効果がなくなるので、その日のうちに使い切りましょう。
 
 これらの治療内容や手技は医師によって異なりますので、一度専門医に相談してみてください。日頃からマスクなどで鼻を保温、保湿するとともに、水分を十分取ることも大切です。焦らずに、根気強く治療を続けてください。

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