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県民の皆さまへ

 前回まで麻疹の症状やワクチンの必要性について述べてきました。今回も麻疹の怖さについてもう少しお話したいと思います。

 麻疹の中で多いのは呼吸器系の合併症です。とくにウイルスによる直接の肺炎・気管支炎に加えて細菌の2次感染による肺炎には油断ができません。細菌に対する免疫力の低下によって肺炎は重症の肺炎になることが珍しくありません。また、まれに神経系の合併症が起こることがあります。麻疹脳炎は麻疹1,000~2,000例に1例発生すると言われています。けいれんや意識障害などその症状が重篤であり生命を落とすこともあり、助かっても後遺症を残すことがあると言われています。また麻疹の神経合併症のなかには、麻疹にかかって数年後に行動異常や学習障害などの形で発病し、その後、難治性のけいれんや知能の退行などをきたすSSPE亜急性硬化性全脳炎と呼ばれる疾患もあります。SSPEに対する治療はさまざまな試みがなされていますが、未だに有効な治療法がないのが現状です。

 昔から生後6ヵ月間は麻疹にはかからないと言われていました。しかし世の中に麻疹が減少したこと、またワクチンで免疫をつけた世代が親になり始めたことで、これから親になる成人の麻疹に対する抗体が減少し、生まれてくる新生児や乳児でも麻疹にかかる可能性が出てくるのです。つまり麻疹が制圧されないで時々流行するような中途半端なワクチンの仕方ではかえって不幸な結果を招くことになるかも知れないのです。

 ワクチンが個別接種になってから、接種率が低下しているとの報告を目にすることがあります。ワクチンの種類によって、また地域によってかなりの差があるものと思われます。自分の健康は自分で責任をもつ。そして身体の調子が最も良い時にワクチンを受けることが出来るのが個別接種の考え方なのですが、どうしても忘れてしまったり都合が悪かったりして接種出来ずに放置されているものもあると思われます。また副作用などの不確かな情報に惑わされることがあるのかも知れません。1歳を過ぎたらなるべく早く麻疹ワクチンを、少なくとも1歳半までには必ず済ませるようにしましょう。

2002年1月8日掲載

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