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熱性けいれん(3)


徳島県小児科医会 日浦恭一


 熱性けいれんの再発はそれ程多いものではありません。しかし発熱のたびにけいれんが起こるかもしれないという不安は常につきまといます。このような熱性けいれん再発の不安に対する対応が必要です。

 熱性けいれんの中でも、熱が出ると必ずけいれんが起こる場合には発熱初期に予防が必要です。熱性けいれんの予防に解熱剤は効果がありません。熱性けいれんの予防には発熱初期にジアゼパムの座薬を使用します。高熱が持続する時には8時間後に再挿入します。これで高熱が3日間続いても薬剤の血液中濃度が保たれて熱性けいれんが予防できます。

 熱性けいれんでも比較的低い熱で発生するものや、発熱と同時にけいれんが起こって、ジアゼパム座剤で予防できない場合にはフェノバルビタールやバルプロ酸などの持続内服を1~2年間続けることもあります。しかし持続内服にはそれぞれに問題があります。また持続内服によって、てんかんへの移行が予防できる訳ではありません。

 病院受診時に熱性けいれんが長く持続している場合には速やかにけいれんを停止させる処置が必要であると同時に、けいれんおよび発熱の原因検索が重要です。

徳島新聞2009年8月26日掲載

熱性けいれん(2)


徳島県小児科医会 日浦恭一


 多くの熱性けいれんは短時間で止まり、後遺症を残すこともありません。このようなものを単純性熱性けいれんと呼び、一生の間に1回か2回しか起こりません。このようなものは放っておいても5~6歳になれば自然に起こらなくなるのです。

 しかし熱性けいれんの中には何回もくり返して起こす場合があり、3回以上反復して熱性けいれんが起こる確率は約9%あります。再発に関する注意因子としては、1歳未満に発症することと、両親または片親に熱性けいれんの既往があることです。このような場合の再発率は50%に達すると言われます。そこで再発の予防を考慮するのです。

 また熱性けいれんでは、てんかんとの関係が問題になります。熱性けいれんを有す人の方が、てんかん発症の頻度が高いとされます。

 てんかん発症に関する注意因子としては、熱性けいれん発症前に明らかな神経学的異常や発達遅滞があること、発作が非定型的であること、両親や同胞にてんかんの家族歴があることです。

 熱性けいれんを起こした子どもに、これらの因子がある場合には脳波やCT、MRIなどの検査による神経疾患検索の必要があります。

徳島新聞2009年8月19日掲載

熱性けいれん(1)


徳島県小児科医会 日浦恭一


 救急外来を受診する理由の中に高熱が原因で起こるひきつけ(けいれん)があります。高熱にともなうけいれんは乳幼児に多く見られる発熱の合併症です。今月は熱性けいれんについて考えてみました。

 日本人には熱性けいれんが7~8%見られます。その多くは生後6ヶ月から3歳までに発生し、とくに1歳代に多く見られます。男子に多く、遺伝的な素質が関与するものがあります。

 熱性けいれん発作の多くは5分以内に終わり、ふつう終わった後に後遺症を残すことはありません。

 しかし、けいれんの現場に立ち会うと、子どもの手足は硬直してブルブルふるえ、意識がなく、顔色は蒼白で、けいれんが永久に続いて、両親にはこのまま死んでしまうのではないかと思われるほど、生きた心地がしないものです。

 熱性けいれんは中枢神経系の感染症や代謝異常、その他明らかな原因疾患が除かれたものを言います。多くの熱性けいれんは一生の間に1回か2回しか起こらず、知能障害や運動麻痺など後遺症を残すことはありません。

 受診時にけいれんが止まっていて、意識が回復していれば心配することはありません。

徳島新聞2009年8月12日掲載

 川崎病の治療にはアスピリン療法や大量ガンマグロブリン療法などが行われています。治療の目標はできるだけ循環器系の後遺症を残さないことにあります。

 急性期に見られる循環器症状の多くは後遺症なく治癒しますが、治療に関わらず冠動脈瘤を残すものが5~8%あると言われます。

 川崎病の循環器系の病変としては冠動脈の拡大、冠動脈瘤、巨大冠動脈瘤、冠動脈の狭窄、弁膜病変などがあります。重症の後遺症を持つ子どもたちには虚血性心疾患発生の危険性がありますから、長期間の治療や運動制限が必要となります。

 川崎病における血管病変は、血管炎のために血管内膜の破壊から血管の拡大、動脈瘤の形成、血栓形成などの経過をとり、その後正常化した人でも血管壁の変化が残っていることがあります。

 乳幼児期に川崎病にかかって、急性期に冠動脈病変が見られた人の中にはその後、運動量が増加するに従って血管壁に対する負担が増し、虚血性心疾患が発生する危険性が高まることがあります。川崎病では症状のない人でも十分な経過観察が必要です。

徳島新聞2009年7月22日掲載

 川崎病は乳幼児に多い急性熱性疾患で、全身の血管炎による症状が特徴の病気です。その原因は不明ですが心血管系に病変が見られることがありますから注意が必要です。

 川崎病の代表的な症状は6つあります。(1)5日以上続く発熱、(2)四肢末端の変化、(3)不定形発疹、(4)眼球結膜の充血、(5)口唇・舌の変化、(6)頸部リンパ節腫脹の6つです。
発熱はもっとも大切な症状です。高熱が持続するものは重症で、冠動脈の病変も発生しやすいと言われます。

 四肢末端の変化は、急性期には手背・足背の硬性浮腫が、回復期には指先などの膜様落屑が認められます。

 不定形発疹には様々な発疹が認められます。BCG接種者では一度消えたBCG接種痕が再び赤くなります。

 口唇の発赤や亀裂、イチゴ舌も多い症状です。頸部リンパ節腫脹の出現頻度は比較的低いのですが、頸部痛が初発症状になる場合もあります。

 この6つの主要症状のうち5つ以上あれば川崎病と診断されます。これらの症状は全身の血管炎がもとになって出現するものです。

徳島新聞2009年7月15日掲載

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