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 乳児、幼児の肌がカサカサする場合「さめ肌」とアトピー性皮膚炎を考える。

 「さめ肌」は魚鱗癬と呼ばれ、いろいろなタイプがあり、知能が遅れることもある。

 アトピー性皮膚炎の場合、特に皮膚炎を伴わないアトピー体質のこどもの肌はカサカサと乾燥しているばかりでなく、注意深く観察すると、毛穴が突出して、ザラザラとしている。ちょうど鳥肌が立ったような箇所が認められる。カサカサの肌は皮膚の角質の出来が正常でなく、外界からの刺激に対する抵抗力が少なく、刺激物が容易に表皮内に侵入して、かゆみの神経を刺激してかゆみを引き起こす。かゆみのために掻くと、なお一層角質に損傷を与え、細菌感染やウイルスの感染を起こしやすい。

 アトピー性皮膚炎に除去食療法が施されているが、乳児期の大切な発育期に過度の除去食を続けるのは良くない。除去食療法を続けたこどもの将来の発育に及ぼす確かなデータは今のところない。いずれにせよカサカサの肌はいろいろの感染症の引き金となるので、早めに治療することが大切である。そのためには炎症がなければ、顔には保湿クリーム(例・コラージュクリーム)、身体には尿素軟膏(例・ケラチラミンコーワ、ウレパールクリームなど)を入浴後塗布するか、保湿剤入りの入浴剤(例・バスキーナ)を用いると良い。

 インフルエンザが流行すると、一番かかりやすいのは小・中学生を中心とする小児である。最近の十数年間はA香港型、Aソ連型、B型が、少しづつ変異しながら交互に、又は同時に混合して流行している。インフルエンザは気道に感染し、病変は殆どの場合気道にとどまる。しかし例外的に筋肉、脳、リンパ節に病巣をつくる場合がある。

 小児の場合、満五歳未満では合併症が起こりやすく、ワクチン接種の効果が期待出来る。また脳炎等の中枢神経合併症がワクチン接種によって予防できると考えられている。近年の予防接種法の改正により、小・中学生のインフルエンザ集団予防接種は行われなくなり、任意となった。普通このワクチンは三~四週間の間隔をおいて二回皮下注射するが、六歳以上になると、少しは免疫をもっている場合もあって、ワクチンは追加免疫の効果を狙うことになり、一回の注射でもかなり効果が期待できる。

 ワクチンの効果は接種後三ヶ月ぐらいがピークといわれ、流行時を見計らって接種するのが望ましい。いずれにしても、インフルエンザの予防にはワクチン以外になく、70%以上の有効率といわれる。副反応は注射を受けた部位が赤く腫れる程度で、発熱なども殆どない。また、ワクチンは卵を使ってつくるので、卵アレルギーがある場合は接種しない。現行のインフルエンザワクチンはHAワクチンしかなく、インフルエンザウイルスの変異に対応した不活化噴霧ワクチン、生ワクチンなど、多様なワクチンの開発が望まれる。

 現代はあまりにも大人社会になり、こどもの存在が薄れている。もしもこどもが大人と同じように自分を主張できれば、こどもの言い分はごく身近にあふれているにちがいない。身近な例では、二歳ごろの「反抗期」という言葉があるが、こどもは大人に反抗しているわけではない。赤ちゃんからこどもに移行していく時期の自己主張の現れに過ぎない。こどもは大人が理解できるようにうまく表現できないだけだ。
 
 ユニセフの「児童の権利に関する条約」の中に「家族は社会の基礎的集合であり、児童の成長と福祉のための自然的環境である」とあり、家庭でのこどもへの気配りの大切さを唱っている。

 「紙おむつ」をとってみても、便利になったとはいえ、大人の都合で開発されたものであり、何時間も放って置かれては困る。赤ちゃんの身になって手をかけて欲しい。排泄の時に手を差し延べるのが育児だ。

 赤ちゃんが「したそうな時」、「している時」あるいは「した後」の何らかのサインをキャッチして欲しい。最近倍増したといわれる保健室登校にしても、学校と家庭が安心と信頼を保証する空間であるべきで、保健室だけがかかえこまず、学校全体、家族、社会全体が体制を整えていくことが急務と考えられる。

 先頃の新聞に日本人の母親の母乳中にもダイオキシンが含まれているという報道があった。母乳栄養をすすめている立場から、この件を整理してみたい。

 ダイオキシン類は動物実験では非常に強い毒性を有する物質であり、種々の発生源から出される科学物質である。またダイオキシン類は分解し難いため、環境中に残りやすく、また脂肪組織にも蓄積することが知られており、世界的にも問題となっている。

 ダイオキシン類は母親に摂取されると、乳汁中に分泌され、乳児に移行することが知られている。それでも母乳栄養をすすめていくには、その安全性の確保を図る必要がある。そのため我が国では「環境庁ダイオキシンリスク評価検討会」が組織され、その中間報告が厚生省児童家庭局母子保健課より配布された。その要旨

我が国で、乳児に与える母乳中に一定程度の ダイオキシンが含まれているが、
母乳の有益性及び安全性の観点から母乳栄養を進めて行く。

 このように母乳中のダイオキシン類の摂取が、乳児に与える影響は直ちに問題となる程度ではない。我が国よりも母乳中のダイオキシン含有の多い諸外国においても、母乳栄養は規制されておらず、母乳は乳児の発育、感染防止、栄養補給の効果が大きく、母乳栄養は進めることとなっている。ダイオキシン汚染は国民一人一人が加害者にも被害者にもなり得ることから、これからも、その危険性のチェックは、続けられねばならない。

 てんかんは子どもの病気である。てんかんの発病の大半は三歳以下である。従って三歳以下のてんかんをなんとかして予防できれば、てんかん全体が激減するにちがいない。成人
になってのち、発症する例は少ない。子どものてんかんの大半は治る。それでも中には治り難い例もある。子どものてんかんが大人のてんかんに、どのように移行し、変わっていく
かはまだ十分わかっていない。昔はてんかんというと、治り難い遺伝性疾患という偏見があった。治癒率も30%程度であったが、今や80%の治癒率といわれている。それは診断上の正確な分類、治療薬の進歩と薬理の知識の向上による。

 てんかんの外科もアメリカでは細菌進歩しているが、脳の発達段階にある子どもは避けて、十五歳以上に限られている。てんかんの子どもについて「水泳させてもいいか」「予防接種はしてもいいか」というような質問がしばしばされるが、その場合大切なことは「すべてのてんかんの子どもが同じではない」という認識であり、すべてを一括して返答するには無理がある。しかし予防接種の個別化と大病院の予防接種外来の設置により、てんかんの予防接種問題は改善された。水泳については親の良識と医者の判断にまかせるのが良い。

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