【質問】まぶたのしこりが気になる
30代半ばの男性です。朝起きたら、まぶたが蚊に刺されたように腫れ上がっていました。痛みを感じながら数日間様子を見ましたが治る気配がなく、眼科に行くと「霰(さん)粒(りゅう)腫(しゅ)」と診断されました。切開して脂肪を絞り出したので見た目は治っていますが、まぶたの内側にぐりぐりした球状のしこりが残っています。2種類の点眼薬を処方してもらいましたが気になります。また手術した方がいいのでしょうか。
【答え】大きい場合 手術が有効
遠藤眼科医院 田近智之
まぶたにできる腫れ物はまとめて「ものもらい」「めいぼ」などと呼ばれています。ご質問の霰粒腫はその中の一つで、まぶたの中にコリコリとした固いしこりが触れるように感じるため、特に「石めいぼ」と呼ばれることもあります。
まぶたの中には瞼(けん)板(ばん)というまぶたの芯になる板状の固い組織があり、まぶたの縁の形を作っています。瞼板の中にはマイボーム腺という油分を作る分泌腺が一列に並んで入っています。まぶたの縁にあるマイボーム腺の出口からは常に油分が分泌され、目の表面に油膜を作って目の乾燥を防ぐ働きをしています。
このマイボーム腺がつまってしまうと油分を含む分泌物が貯留し、袋状に膨れてきます。貯留した古い分泌物が異物反応のもとになって炎症が起こり、慢性的にしこりのような腫れが続く状態が霰粒腫です。
霰粒腫はほとんど痛みがないことが特徴ですが、ご質問のケースのように、初期には急な腫れや痛みが起こり、その後、慢性的な霰粒腫になる場合も多く見受けられます。霰粒腫の中には貯留した分泌物の他、ゼリー状の脂肪肉(にく)芽(げ)腫(しゅ)という細胞組織が増殖しており、霰粒腫の周りがカプセル状に変化してきます。
霰粒腫の治療は、まず急激に強い腫れや痛みが出てきた場合には細菌感染が疑われるため、抗生物質や消炎剤の内服・点眼など、薬での治療を行います。炎症がある程度落ち着いている場合には切開手術が最も効果的な治療です。
切開手術では、貯留している古い分泌物を出すだけではなく、脂肪肉芽腫をきれいに切除し、カプセル状の被膜もできるだけ摘出します。多くの霰粒腫はこれで治りますが、中には脂肪肉芽腫が再び増殖し、しこりが残ったり、再び大きくなってきたりすることもあります。
霰粒腫があまり大きくなく、できてから比較的早い時期であれば、温(おん)罨(あん)法(ほう)といって、まぶたを蒸しタオルなどで温め、マッサージを行って内容物の排出や吸収を促し、自然と治るのを待つ方法があります。温罨法と併せてマイボーム腺の出口があるまぶたの縁を、刺激の少ないベビーシャンプーなどで洗うようにします。これらの方法は霰粒腫発生の予防にもなります。
薬剤で治すには、炎症を抑えるステロイド懸濁液という薬剤を霰粒腫に注射する治療が有効ですが、注射の痛みや皮下出血の危険などの難点があります。
霰粒腫が大きい場合や、できてから時間がたっている場合には、やはり切開手術が勧められます。手術方法は前述のとおりですが、少量のステロイド懸濁液を切開部に注入しておくと術後の腫れも少なく、しこりが早く消えます。
ご質問の方の場合、残存した霰粒腫はまだそれほど大きくなく、外見上は目立たないようですが、気になるようであれば主治医と相談してみてください。