【質問】 目がかすみ視力も低下
30代の男性です。最近、目にかすみがかかったようになり、視力もやや低下してきました。病院では、ぶどう膜炎と言われました。点眼薬で治るのでしょうか。治療に時間はかかりますか。
【質問】 ぶどう膜炎 -症状に合わせ点眼や内服薬-
徳島大学病院 眼科助教 江川麻理子
白内障や緑内障と違い、ぶどう膜炎はまれな病気のため、ご存じの方は非常に少ないと思います。
ぶどう膜は血管や色素が豊富な組織で、前方にある虹彩(茶色目の部分)、毛様体、眼底の奥にある脈絡膜から成り立っています。何らかの原因で、これらの組織に起きた炎症を「ぶどう膜炎」といいますが、ぶどう膜に接する網膜(カメラのフィルムに該当)や強膜(白目)に炎症が起きた場合も含みます。
虹彩や毛様体の炎症を「前部ぶどう膜炎」、網膜や脈絡膜の炎症を「後部ぶどう膜炎」といいます。特に、網膜に炎症が及ぶと視力障害を起こし、重症例では失明することがあります。
ぶどう膜炎の原因は、ベーチェット病、サルコイドーシス、原田病が約4割を占め、3大ぶどう膜炎といわれます。そのほか、膠原(こうげん)病、糖尿病、ウイルスや細菌などの感染が知られていますが、いろいろな検査を行っても約半数が原因不明です。
症状は炎症が起こる部位や程度によってさまざまです。「前部ぶどう膜炎」では▽目が赤い▽目が痛い▽まぶしい-など、「後部ぶどう膜炎」では▽見えにくい▽ゆがむ▽黒い影が見える(飛蚊(ひぶん)症)-などの自覚症状がみられます。
3大ぶどう膜炎は全身症状を伴います。ベーチェット病では口内炎がよく見られますし、サルコイドーシスでは胸のリンパ節の腫れが見られ、原田病では耳鳴りや頭痛を伴います。感染性では片目が多いですが、3大ぶどう膜炎のように全身症状を伴う疾患では通常、両目に症状が出ます。
特徴的な目の所見から診断がつくこともありますが、ぶどう膜炎は全身の異常に関係することが多いため、血液や尿の検査、胸のレントゲン撮影、全身症状の確認が重要です。全身的な疾患が疑われる場合は、内科での精密検査が必要です。
原因が分かれば、治療方針を決めることができます。治療にはよく、炎症を抑えるステロイド薬を使用しますが、その使い方には点眼、目への注射、内服や点滴などがあります。
「前部ぶどう膜炎」は点眼でも十分に効果があることが多いのですが、眼底の炎症には内服が必要になることがあります。適切に使用すれば大変よく効く薬ですが、眼圧上昇や血糖上昇など副作用が出る場合があり、使用中は定期的な診察と検査が必要になります。
感染によるぶどう膜炎の場合は、感染を抑える薬を併用しなければいけません。ベーチェット病のぶどう膜炎では、免疫抑制剤のような特別な薬を使用します。炎症により、緑内障や白内障、網膜剥離などの合併症が起きた場合は、目の手術を要することもあります。
予後は原因によっても、また個々の患者によってもさまざまです。早期に治る方がいる一方、炎症を繰り返して長期間治療が必要なぶどう膜炎もあります。炎症の持続や再発は視機能を悪化させるため、病状に合わせた治療の調整と経過観察が必要です。
くれぐれも自己判断による急な薬の中断や減量はやめ、医師の指示を守り、気になる症状があれば早く受診しましょう。
徳島新聞2012年1月29日号より転載