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【質問】 吹き出物なかなか治らず

 60代の女性です。最近、目や鼻、口の周りに赤いぶつぶつとした吹き出物ができました。病理検査をした結果、顔面播種状粟粒性狼瘡(がんめんはしゅじょうぞくりゅうせいろうそう)(LMDF)と分かりました。飲み薬や塗り薬を試していますが、なかなか治りません。完治するまでどれくらいかかりますか。薬を変えてもらう方がいいのでしょうか。



【答え】 顔面播種状粟粒性狼瘡 -飲み薬主体に根気よく-

徳島市民病院 膚科部長 内田尚之

 顔面播種状粟粒性狼瘡という病気にかかり、お悩みのことと拝察いたします。

 まず、この病気について説明します。20~40代によくできるもので、発生部位は顔面です。額やまぶた(特に下まぶた)、頬、鼻、口の周りに1~3ミリの紅色丘疹(こうしょくきゅうしん)(赤いぶつぶつ)や、時には膿疱(のうほう)(白いうみがあるぶつぶつ)が数個から数十個できます。このぶつぶつは押さえると黄白色に見えます。

 見た目だけで診断がつきにくい場合は病理組織検査を行います。質問者も病理組織検査で診断できたようです。この検査では、特徴的な類上皮細胞性肉芽腫(にくがしゅ)という変化がみられ、その中央には毛包(もうほう)があります。よく似た病気に、汗官(かんかん)腫、ざ瘡(そう)(にきび)、酒(しゅ)さ、稗粒(ひりゅう)腫などがありますが、ほとんどは病理組織検査で区別できます。

 顔面播種状粟粒性狼瘡がなぜできるのかについてはいろいろな説があります。結核と関連がある病気と考えられていた時期もありました。しかし現在は、毛包の破壊物に対する肉芽腫反応(毛根を包んでいる毛包が壊れ、その壊れた細胞を異物と見なして攻撃する免疫反応)と考えられています。この病気は一生続くものではなく、数年以内にほとんどが治ります。

 治療については、一般的に定まった治療法はなく、さまざまな内服薬や外用剤が使用されます。最もよく使われる内服薬は、テトラサイクリン系の抗生物質です。この薬は欧米でも日本でも最初に使われます。

 質問者もテトラサイクリン系の抗生物質を内服されていると思われますが、この薬剤の効果が出るのには1~2カ月かかります。そして、ぶつぶつが平らになって色素沈着し、完治するまでには数カ月か、それ以上の期間が必要です。

 また、テトラサイクリン系の抗生物質だけでは効果が低い場合、ジアフェニルスルフォンという内服薬を併用すると効くことがあります。この場合も、効果が表れるのに1~4カ月程度かかります。

 テトラサイクリン系の抗生物質が効かないときには、マクロライド系抗生物質が有効な場合があります。クラリスロマイシンやロキシスロマイシンという抗生剤が使用されますが、これらも効くのに1~3カ月はかかります。また、トラニラスト(内服の抗アレルギー薬)や内服ステロイド薬を組み合わせると有効な場合もあります。

 この病気の治療は飲み薬が主体になりますが、いずれの治療も効果が出るのに1~3カ月はかかり、完治するまでには数カ月から1年近くの治療が必要です。

 薬はゆっくり効いてきます。薬を頻繁に変えず、同じ薬を数カ月継続して治療効果をみることが必要です。治療薬は何種類かありますので、主治医と相談して根気よく治療を行ってください。そうすればこの病気は必ず治ります。

20111023顔面播種状粟粒性狼瘡


徳島新聞2011年10月23日号より転載

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