【質問】 近視だが老眼も よい方法は
50代の女性です。強度の近視でコンタクトレンズを使ってきましたが、最近、老眼を自覚するようになって悩んでいます。老眼に適したコンタクトレンズはありますか?それとも、もうコンタクトレンズはあきらめなければいけませんか?何かいい方法があれば教えてください。
【答え】 老視とコンタクトレンズ -遠近両用など3つの対策-
兼松眼科 兼松誠二(徳島市西須賀町)
老眼は、正式には老視といいます。加齢現象の一つで、近くのものが見えにくくなるなど、ピントを合わせる力が低下していくことです。
遠視と老視は、どちらも凸レンズで矯正するので混同されますが、原因が違います。遠視は遠いところを見るときの屈折異常、老視は加齢による調節力の低下で近くが見えにくくなる状態です。
一般に「老視は遠視の人がなるもので、近視であれば老視にはならない」と思われています。しかし近くにピントを合わせる調節力は年齢とともに衰えますので、すべての人が等しく老視になります。
近視は近くがよく見えるので、なかなか老視を自覚しにくいです。しかしコンタクトレンズで完全矯正していると、正視と同じ条件になります。つまり40代後半から、少し距離をおかないと手元の文字がぼやけます。
質問の女性は、老眼を自覚するようになって不便を感じているとのことですが、対策は3通りあります。▽コンタクトレンズの上から老眼鏡をかける▽近視用コンタクトレンズの度数を少しゆるくして手元を見えやすくする▽遠近両用コンタクトレンズを使用する-です。ここでは3つ目の方法を説明します。
1枚のレンズにどうやって遠くと近くを見るための度数が入っているのか疑問に思われる人も多いでしょう。レンズメーカーによって多少の違いはありますが、レンズ中心部の小さな丸い円(遠用部)で遠くがよく見えます。次にひとまわり大きな円、遠用部の周りの部分(移行部)で中間部が見えます。さらにもうひとまわり大きな円で、移行部の周りの部分(近用部)で近くが見えます。つまりレンズ中心から遠用部、移行部、近用部の順に度数が入っているのです。
しかし、実際にレンズを使用してみると「思ったより近くが見えない」「遠くが見えにくくなった」「遠くも近くも見えにくい」という訴えは珍しくありません。遠近用眼鏡と違って、近用の加入度数にきめ細かさがないのが、遠近レンズの弱点です。完ぺきさを追求しないで、手元がそこそこ見えればよいという姿勢の場合に適しているようです。
強度の近視だからとあきらめることはありません。老視は面倒なものですが避けて通ることのできない人間の宿命です。素直に受け入れて、人生の後半期をうまく付き合って乗り切りましょう。眼科医とよく相談してご自分に最適な方法を見つけてください。
徳島新聞2010年1月10日号より転載