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【質問】 呼吸機能の低下防ぐには?

 60歳の男性です。5年前に肺気腫と診断されました。在宅酸素療法と薬の治療を続けていますが、主治医から治ることはないと言われました。上記の治療法以外で、呼吸機能の低下を防ぐために、自分で心掛けたらいいことがあれば教えてください。



【答え】 肺気腫-リハビリや感染予防を-

たかはし内科 高橋安毅(徳島市国府町)

 肺は、直径100ミクロンほどの肺胞と呼ばれる空洞が集まった、スポンジのような臓器です。肺気腫とは、肺胞が壊れて膨張し、隣り合った肺胞が合わさって大きな気腔(きくう)を形成することでガス交換がうまくできなくなった結果、血液中の酸素が足りなくなる病気です。初期には体を動かしたときに、進行すると安静時でも息苦しさを感じるようになります。

 治療では、症状を和らげるため、気管支を広げて痰(たん)を出しやすくする内服薬や吸入薬を使用します。肺容積縮小手術という外科治療もありますが、適応となるのは一部の症例です。

 病気が進んで血液の酸素濃度の低下がひどくなると、在宅酸素療法の適応になります。日本で在宅酸素療法を受ける患者の原因疾患で一番多いのが肺気腫です。

 肺気腫の原因は明らかでありません。しかし、日本人では喫煙と強く関連していることが分かっています。禁煙により進行は止まりますが、一度肺に起こった変化は元に戻りません。呼吸機能の低下をできるだけ食い止め、日々の生活を楽に送れるようにすることが今後の目標になります。

 その方法の一つが呼吸リハビリです。これは呼吸筋を鍛え、体力低下を予防することで呼吸機能の低下を防ぐ治療です。具体的には<1>口すぼめ呼吸と腹式呼吸の訓練<2>排痰訓練<3>呼吸筋訓練<4>運動療法-などがあります。

 <1>は、あお向けになって頭に小さい枕を当て、ひざを軽く曲げた姿勢になります。胸と腹の動きを感じるため片手を胸に、もう一方の手を腹の上に軽く乗せ、胸はあまり動かないよう注意します。息を吸うとき腹が膨らみ、吐くときは、口をすぼめて長くゆっくり吐き、腹がへこむようにします。慣れたら横向き、座った姿勢、立った姿勢、そして歩きながらこの呼吸法ができるよう頑張りましょう。

 <2>は、体位変換や体を軽くたたくことでうまく痰を出せるようにする方法です。<3>と<4>では、器具を使用して息を吐くときに抵抗を付けたり、全身運動などを行ったりして呼吸筋を鍛えます。

 肺気腫の患者さんは胸や肩の筋肉の緊張が強いので、リハビリをするときには全身の力を抜いてリラックスすることが大切です。

 もう一つ重要なのは感染の予防です。肺気腫の患者さんは呼吸器感染に弱く、いったん感染を起こせば治るまでに時間がかかり、一見元に戻ったように見えても呼吸機能は確実に低下します。日ごろからうがいや手洗いを励行し、歯磨きや口の中の清潔に心掛ける必要があります。

 またインフルエンザや肺炎球菌ワクチンなど、呼吸器感染を予防するワクチンの接種をお勧めします。また、風邪をひいたら早めに主治医に相談しましょう。

 以上、地道な治療ばかりですが、これらを続けることで呼吸機能の低下を防ぎ、日々の暮らしを楽しく送ることができます。

徳島新聞2009年5月10日号より転載

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