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【質問】 口内炎が1年近く頻繁に

 50歳の男性です。自動車整備業を営んでいます。1年ぐらい前から、よく口内炎ができます。治る前に次の口内炎ができ、一度に何カ所にもできます。薬を塗ってもすぐに良くならず、食事をするのもつらく、気分がすぐれません。こんなに頻繁にできると、癌の前触れにならないかと心配しています。原因かどうか分かりませんが、昨年9月に30年間吸っていたたばこ(1日平均30本)をやめました。詳しい原因や治療法を教えてください。



【答え】 アフタ性口内炎 -全身的疾患の可能性も-

徳島大学病院 歯科口腔外科副科長 里村 一人

 口内炎とは、何らかの原因で口腔の粘膜(舌、歯肉、ほおなど)に起こる炎症の総称です。

 口内炎にはカタル性口内炎、潰瘍性口内炎など、いくつかの種類があります。最も多いのはアフタ性口内炎と呼ばれるもので、周囲に赤みを伴う直径数ミリ程度の黄白色の円形ないしは類円形の潰瘍(アフタ)ができます。

 この潰瘍は1個の場合もあれば、数個が同時に発生することもあります。また、何度も繰り返して同じ部位、あるいは場所を変えて発生するものは、特に再発性アフタと呼ばれます。自発痛や接触痛が強く、口腔内に複数個発生した場合には食事をとることが困難になることもあるため、栄養不良により全身状態が悪化し、それがまた口内炎の治癒を遅らせるという悪循環に陥ってしまうこともあります。

 しかし、通常は1週間から10日ほどで自然に治る場合がほとんどで、この場合はあまり心配はいりません。また、この口内炎はいわゆる前癌病変のように直接、口腔癌の発生につながるものではありません。

 原因ははっきりしていませんが、硬い食べ物や誤ったブラッシングなどにより生じた口の中の小さな傷、歯周病による口腔衛生状態の悪化、栄養(特に葉酸やビタミンB群)の欠乏、歯磨き剤に含まれている一部の成分(ラウリル硫酸ナトリウム)、過労、ストレスなどが原因になると考えられています。

 治療法としては、副腎皮質ステロイドを含んだ軟こうの塗布や抗菌性の含嗽(がんそう)剤によるうがい、歯石除去などによる口腔衛生状態の改善、あるいはレーザー治療などの局所的処置のほか、ビタミン剤投与による栄養状態の改善などが行われます。

 ご自分でできることとしては、規則正しい生活、精神的ストレスの緩和、バランスのよい食事を心掛けることのほか、日ごろから口の中を清潔に保ち、歯を磨くときには粘膜を傷付けないような正しいブラッシングを身につけることなどが重要となります。

 特に痛みが強く、十分な食事がとれないときには熱いものや刺激物を避け、薄味にした軟らかい物をとるなどして体力を維持することが重要です。場合によっては市販の栄養食品などを利用してもよいでしょう。

 ここで一つ気を付けておかなければならないことは、このようなアフタが再発を繰り返す場合には、ベーチェット病などの全身的な病気の可能性があるということです。この場合には通常、症状が口腔内のみにとどまらず、皮膚や目など口腔以外にも現れます。そのような場合は早期に歯科口腔外科、眼科、皮膚科などを受診することが重要となります。

 今回の相談者の場合は、皮膚などに何らかの症状があるかどうかは分かりませんが、口内炎が1年近くにわたって繰り返し発生しているということですので、全身的な疾患の可能性も考えて一度専門医を受診されることをお勧めします。

徳島新聞2006年7月30日号より転載

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