【質問】 眼球の動きが不自然で心配
2歳9カ月の娘の眼球の動きが不自然なので、心配しています。寝起きや泣いた後、遠くへ目線を向けた後に、左の黒目が左端に寄り切ってしまうことがあります。1日に何度も起きるときがありますが、しばらくしたら元に戻ります。かかりつけの小児科医は年齢とともに治るといわれましたが、やはり気にかかります。治療する必要があるのでしょうか。そのままにしていても成長とともに症状はなくなるのでしょうか。
【答え】 間歇(かんけつ)性外斜視 -屈折異常十分に検査を-
三河眼科 院長 三河 隆子(徳島市南内町1丁目)
娘さんは間歇(かんけつ)性外斜視と思われます。早いうちに眼科専門医の診察を受けてください。
それでは眼位の異常、特に外斜視についてお話しします。斜視は自分が見ようとする目標に両目が同時に向かず、一方の目が目標以外の方向を向いている場合をいいます。その向きによって内斜視(視線が内側にずれる)、外斜視(外側にずれる)、上斜視(上下にずれる)があります。
外斜視は恒常性と間歇性に分けられ、恒常性の場合は近くを見ても遠くを見ても、いつも斜視になっています。後でお話しする間歇性外斜視から移行することもありますが、多くは先天性です。脳性麻痺(まひ)など脳内に障害を合併していることもあります。恒常性外斜視はそんなに頻度が高いものではありません。
次に間歇性外斜視ですが、これは斜視の中で最も多くみられます。時々斜視が現れます。すなわち、斜視になったりならなかったりする外斜視です。娘さんは寝起きや泣いた後、左の目が外側に向くということですので、この間歇性外斜視と思われます。
外斜視の治療は、外科的な手術が原則です。恒常性斜視で先天性の場合には、手術の後、眼位が正常に近づくと複視(1つの物が2つに見える)が出る場合がありますので、幼児期に手術する方が問題が少なくてすみます。複視が抑制されて苦痛を訴えることが少ないためです。
間歇性斜視の場合は、まず近視、遠視、乱視などの屈折異常がないか十分に検査します。強い屈折異常があれば、眼鏡をかけて矯正します。それでも斜視の頻度が高いようなら手術します。
手術では、目の内直筋(目を内側に向ける筋肉)の働きを強くし、外直筋(目を外側に向ける筋肉)の働きを弱くします。間歇性斜視は、もともと両眼視の機能(立体視など)がある程度ありますので、複視などの苦痛が少なく、予後が良いのが普通です。手術もそれほど困難ではありません。
しかし、手術をして眼位が正常になっていても、手術後にまた元に戻ることがよくあります。そのために再手術が必要な場合もまれではありません。従って、再手術ができるだけ少なくて済むように外斜視の頻度が高くなり、目立つようになってから行うことが多いのです。一般に就学期や学童期に手術することが多いようです。
次に斜視一般にいえることですが、斜視では、斜視になっている目の視力の発達が妨げられることが多く、およそ半数が弱視になるといわれています。また、両目で物を見ることができない場合も少なくありません。そのため、手術の後、両眼視の訓練や、弱視があれば弱視訓練が行われます。斜視が発見されたら早期に適切な治療を受けてください。