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【質問】 指先にしびれ感や痛み

 指先にしびれ感や痛み質 問50代半ばの女性です。1年ほど前から指先、特に中指にジンジンとしびれ感や痛みがあります。医師には手根管(しゅこんかん)症候群と診断され、薬もくれませんでした。手首の使い痛めと言われましたが、更年期障害とは関係ないのでしょうか。手首を使うスポーツはやめた方がいいのでしょうか。辛抱できない痛みではないので、そのままにしています。



【答え】 手根管症候群 -保存療法だめなら手術-

高田整形外科病院 副院長 宗広 秀史(板野郡北島町中村)

 ご相談のしびれ感は、手の中指から母指(親指)にかけて手のひら側(掌側(しょうそく))だけに認められるのでしょうか。手首の掌側をたたくと指先へ痛みが走ったり(放散痛)、手首を曲げてしばらくすると、しびれが強くなったりしないでしょうか。そうだとすると、診断されたように手根管症候群が疑われます。

 手関節の掌側中央には、骨と靭帯(じんたい)が形作る手根管というトンネルがあります。ここを9本の指屈筋腱(けん)と正(せい)中(ちゅう)神経が通っていて、さまざまな原因によって神経が圧迫されて発症する一種の絞扼(こうやく)神経障害が手根管症候群です。

 正中神経は精密な神経と呼ばれるように、障害を受けると母指の繊細な動きが損なわれて日常生活に支障をきたします。神経が圧迫されますと、初期には知覚神経の障害として母指、示指(人さし指)、中指、および薬指の母指側にしびれ感が出現します。しびれ感は手を使い過ぎた後に強まったり、夜間や早朝に痛みを覚えたりすることもあります。

 さらに神経の圧迫が続けば、運動神経の障害として母指球筋(手のひらの母指側にある膨らみ)の萎縮(いしゅく)が起こり、摘み動作などが障害されます。あたかもサルの手のひらのように扁平(へんぺい)となるため、この変形は猿手と呼ばれています。

 手根管症候群の原因は、就業時、日常生活での手の使い過ぎ、手関節骨折・脱きゅうおよび変形の後遺症、腫瘍(しゅよう)、腱鞘(けんしょう)炎、透析、全身性疾患(糖尿病、慢性関節リウマチなど)、神経・筋の奇形などが知られていますが、原因が特定できない、いわゆる突発例も存在します。また女性では妊娠・出産期と更年期に発症のピークがあり、ホルモンの乱れによる腱の浮腫や、神経が傷つきやすくなっていることが考えられています。

 治療は、症状が比較的軽ければ、まず保存療法を行います。消炎鎮痛剤の内服や理学療法、装具などによる局所の安静、また局所への副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤注入などです。突発例や手の使い過ぎが原因と考えられる症例では、保存療法で治る場合も少なくありません。

 3カ月程度で改善しない場合や進行例は手術をします。手術の目的は、手根管内で圧迫されている神経を除圧することです。通常は手根管を形成している靭帯(横手根靭帯)を切り離すことにより行われますが、腫瘍などがあればこれを切除しなければなりません。神経の回復にも限界がありますので、母指球筋の萎縮がひどくなる前に手術を受けた方がよいでしょう。

 正中神経の圧迫は、手根管部だけでなく、ひじ周辺で生じることもありますし、手指のしびれと痛みは頚椎(けいつい)疾患などでも認められますので、他の疾患との鑑別が必要です。ご質問からは痛みとしびれ以外の症状が不明ですので、一度、専門医を受診されることをお勧めします。

徳島新聞2001年4月29日号より転載

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