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【質問】視野欠損、広がり不安

 60代の男性です。2006年に左目が「正常眼圧緑内障」と診断されました。検査で視野欠損が見つかりましたが、現在は7~8倍に広がり、不安を感じています。点眼薬2種類を使用しており、眼圧は9~11ミリHgです。この程度の視野欠損の広がりは仕方のないことなのでしょうか。

 正常眼圧緑内障秦眼科 秦裕子 先生

 【答え】点眼薬強化の余地も

 正常眼圧緑内障は眼圧が正常(10~21ミリHg)にもかかわらず視神経障害が起こる病気で、日本人の緑内障患者の約7割を占める病型です。

 眼圧が高いと視神経が障害され、視野障害を来すことは随分前から知られていますが、眼圧が正常なのになぜ視神経障害が起こるのでしょうか? その病態は全て解明されているわけではありません。

 視神経が圧力に強いか弱いかには、個人差があります。眼圧が正常でも緑内障を発症する正常眼圧緑内障は、脆(ぜい)弱(じゃく)な視神経(もともと視神経が弱いこと)であることが、発症原因の一つと考えられています。

 これに対し、いくら眼圧が正常であっても、さらに眼圧を下げることが治療の第一歩となります。元の眼圧(無治療時眼圧)よりも低い眼圧にすることによって、弱い視神経でも生き延びやすい環境をつくるのが治療の目的です。

 ただ残念ながら、緑内障の治療においては「これさえしておけば絶対に進行しない」という方法はありません。まずは1剤の点眼薬で経過観察し、不十分であれば点眼の変更または追加を行う。それでも進行するならさらに治療を強化する、という地道な治療を繰り返していくことになります。

 緑内障点眼薬の効果には、眼圧を下げることを主として、循環改善や神経保護が報告されているものもあり、それらを組み合わせて治療していきます。

 きちんと毎日点眼していても視神経障害が正常に戻るわけではないため、「点眼していても、していなくても一緒じゃないか」と思うことはあるかもしれません。しかし、この地道な治療を継続していくことで、自然経過(無治療で放置すること)よりも視野進行は抑えられています。

 いろいろな種類の点眼薬を使用しても眼圧が十分に下がらない場合は、緑内障手術を検討します。手術による合併症もあるため、点眼で経過を見るべきか、手術に踏み込むべきかは▽年齢▽視野の進行程度▽点眼でどこまで眼圧が下がっているか▽他眼の状態-などによって検討されるべきことです。

 一見眼圧が十分下がっているように見えても視野狭(きょう)窄(さく)が進行する場合は、眼圧日内変動といって、入院の上24時間(3時間ごと程度)の眼圧検査を行うこともあります。その結果、夜間のみ高眼圧を示す方がたまにおり、その場合は日中の眼圧がよくコントロールされていても点眼を強化したり、手術を検討したりします。

 不安もあるかと思いますが、ご質問の方の場合はまだ点眼薬強化の余地もあります。引き続ききちんと点眼すること、定期受診で現在の治療を強化しなくてもいいのかどうかを判断していただくこと、さらに、右目は正常な状態を保っているのかどうかを見ておくことが大切かと拝察いたします。

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