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【質問】 薬が効かず仕事に影響

 40代の男性です。疲れをとるためにもぐっすり眠りたいと思っているのですが、眠れずに困っています。眠れないまま朝がきて、仕事をしている昼間がつらくなるようになってきました。市販の薬も試しましたが、飲み始めに比べると、最近はあまり効果が感じられなくなり、副作用への不安もあってやめてしまいました。体がだるく、ぼーっとして夢と現実の区別が付かなくなりそうです。何科を受診したらいいのでしょうか。



【答え】 睡眠障害 -精神・神経科などを受診-

岩城クリニック 心療内科 兼田 康宏(阿南市学原町上水田)

睡眠障害対処12の指針
1.
睡眠時間は人それぞれ。日中、眠気で困らなければ十分
2.
夜は刺激物を取るのを避け、眠る前には自分なりのリラックス法を試みる
3.
眠くなってから床に就く。就寝時刻にこだわり過ぎない
4.
毎日同じ時刻に起床
5.
光の利用で良い睡眠
6.
規則正しい3度の食事と規則的な運動習慣
7.
昼寝をするなら午後3時前の15-30分
8.
眠りが浅いと感じるときは、むしろ遅寝・早起きに
9.
睡眠中の激しいいびき・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意
10.
十分眠っても日中の眠気が強いときは専門医に
11.
睡眠薬代わりの寝酒は不眠のものと
12.
睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
厚生労働省の班研究による
「睡眠障害の対応と治療ガイドライン」
 睡眠障害は大まかに、不眠症、過眠症、覚醒(かくせい)リズム障害の3つに分けられ、その中で最も多いのが不眠症です。不眠症とは、その人の健康を維持するために必要な睡眠時間が量的・質的に低下し、そのために社会生活に支障をきたしたり自覚的にも悩んでいたりする状態をいいます。

 ある調査結果によると、日本人の5人に1人が睡眠に関する悩みを抱えているといわれており、睡眠の軽視は時として重大な事故を引き起こします。例えば、巨大な産業事故であるスリーマイル島の原発事故(1979年)やスペースシャトル・チャレンジャー号の爆発(1986年)などは、睡眠不足からきた作業ミスにより起こったと推測されており、その損害額は膨大です。

 さらに、不眠は脳・精神機能のみならず、身体機能にも大きな影響を及ぼします。不眠によって老化が促進され、高血圧や糖尿病などの慢性的な生活習慣病が悪化する可能性も報告されています。

 不眠の背景には内科的・精神科的疾患、ストレス、不規則な生活リズム、薬や嗜好(しこう)品など何らかの原因が存在しますが、現代社会ではさまざまな精神的ストレスによる不眠が多いといわれています。

 不眠はその症状から「寝付きが悪い」「早朝に目が覚める」「夜中に何度も目が覚める」「熟眠した気がしない」の主に4つのタイプに分類されています。不眠の治療は、薬物療法と非薬物治療の2種類に大別され、治療の基本は非薬物療法です。

 まず、不眠の原因に心当たりがあれば、その原因を取り除くようにします。次に、毎日の生活習慣の見直しや改善に努めます〈表参照〉。それでも十分な効果が得られないときには、睡眠薬による治療が行われます。

 不眠に使用される薬は、主にベンゾジアゼピン系の薬物で、ストレスによる不安や緊張を和らげたり、睡眠リズムを調整したりすることにより効果を発揮します。睡眠薬は症状に応じて使い分けられており、「寝付きが悪い」タイプには作用時間の短い薬、それ以外のタイプの不眠には作用時間の長い薬が効果的です。

 快適な眠りが得られるようになると、睡眠薬は徐々にやめられます。ただし、薬のやめ方には個人差がありますので、自分で判断せずに医師の指導に従って行うことが重要です。急にやめたりすると、かえって不眠が悪化することもあります。

 最近の睡眠薬は安全性が高いのが特徴で、癖になったり量を増やさないとだんだん効かなくなる(耐性ができる)ということはなく、副作用もあまり心配ありません。市販の睡眠薬は抗ヒスタミン薬で、軽い一過性の不眠に用いる場合は効果が期待できますが、長期不眠に対して連用すると耐性ができ、徐々に量が増えてしまう可能性があるので、自己判断での服用継続はよくありません。

 また、寝酒(アルコール)は耐性を作りやすく、徐々に量が増える上、かえって睡眠の質を低下させるので注意が必要です。

 今回の相談では、市販薬も効きが悪くなり、日中への影響も出てきていることから、早期にかかりつけの医師に相談することが肝要です。特に心当たりがなければ、近くの精神科・神経科、心療内科を掲げる病院や診療所の受診をお勧めします。

徳島新聞2007年3月4日号より転載

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