徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

【質問】 プール遊びでの感染が心配

 7歳の子どもの母親です。今年は、プール熱という病気が、何年かぶりかの大流行だと、ニュースで知りました。風邪に似た症状や結膜炎になると聞きました。今年の夏は特に暑いので、夏休みは海やプールへ足しげく遊びに行こうと思っていましたが、プールで感染するとなれば、心配です。子どもにとって、危険な病気なのでしょうか。プール遊びはしない方がいいですか。予防策を教えてください。



【答え】 プール熱(咽頭結膜熱) -むやみに恐れず体力アップ-

すずえこどもクリニック 鈴江 純史(徳島市八万町沖須賀)

 プール熱は、正式な診断名では「咽頭結膜熱」と言います。アデノウイルスの感染で発症する感染症の一つです。プールを介して感染することがあるため、このような俗称でも呼ばれます。

 症状には3つの特徴があります。<1>発熱<2>のどが赤い<3>結膜の充血-で、感染性が強いため、学校保健法で主症状が消失後、2日を経過するまで出席停止扱いとなっています。

 相談にお答えする前に、プール熱を起こすアデノウイルス感染症について、少し説明します。呼吸器感染症を起こすアデノウイルスは1から7の型が知られています。そのうちプール熱の原因としては3、4、7型がありますが、最も頻度が高いのは、3型であることが分かっています。

 しかし、アデノウイルス感染症が、別の病気の型を示す場合もあります。例えば単なる咽頭炎(のどが赤く、発熱はあるが、結膜の充血はない)、滲出性扁桃炎(しんしゅつせいへんとうえん)(扁桃にうみが付着し、高熱がある)、気管支炎、まれに肺炎などです。

 感染性という意味では、どの病気の型でも同じですが、プール熱の場合は、結膜やのどの分泌物が多く、同じタオルの使用や管理の不十分なプールでは、感染の可能性があります。

 プール熱の症状は、5~7日の潜伏期(感染してから症状が出るまでの期間)の後、突然の発熱、頭痛、全身けん怠感などで発病し、同時期あるいは数日遅れて、結膜の充血が見られるようになります。症状は3~5日間、持続します。症状は長いですが、一般的には重症化する心配はありません。ただ、心肺機能や免疫機能の低下がある例や、乳幼児や老人らの一部では、合併症として肺炎などを起こす場合もありますので、注意が必要です。

 感染経路としては、プールなども考えられますが、そのほか、飛沫(ひまつ)(咳などで空気を介して)感染や、手指などを介した接触感染が多いと考えられています。実際、患者の発生状況をみても、1年中、患者があり、プールをしていない時期や低年齢の子どもの発症も目立ちます。

 一方、夏に患者が増えるのも事実で、特に昨年と今年は、かなり流行しているようです。従って、特に幼稚園や保育所などの小規模のプールや水遊びを計画している施設では、水質管理に注意してください。小規模の方が、早く水質が悪化しやすいためです。

 予防としては、感染者と密接な接触を避けること、流行時にはうがいや手指の手洗いを励行することなどです。また、便にもウイルスが出ますので、発病中の乳幼児の場合は、おむつ交換時の手洗いが大切です。

 さて、相談の件にお答えします。以上述べましたように、プールのみが感染の機会ではなく、集団生活や子どもの集まる行事などから感染するケースも多いと考えられます。最近のきちんと管理されたプールでは、あまり過敏になる必要はありません。感染予防の面からプール遊びをやめることは、実質的にはあまり意味のないことです。

 また、もし感染しても、治療後の経過は良好である場合が多いので、かかりつけの病院で診ていただけば心配はありません。

 プール熱をはじめとする夏風邪は現在、まだワクチンで予防することはできません。しかし、感染してもそれによって子どもには免疫が付きますので、以後はたとえ再感染しても軽症になり、大人になると次第にかからなくなります。子どもは、そのようにウイルスに対する免疫を獲得しながら体力がついていくと考えることもできます。

 プールは、子どもにとって、盛夏でもできる楽しいよい運動です。病気をむやみに恐れることなく、体力を付けることも大切です。もしこの病気になれば、十分に休んで、回復するまで他人にうつさないように注意すればよいと思います。

徳島新聞2004年7月25日号より転載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.