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【質問】 娘の鼻血が止まらない

 小学1年生の娘の鼻血が止まりません。昨年6月ごろに数日続いたので耳鼻咽喉(いんこう)科を受診したところ、粘膜が傷ついていたため焼き付けをしました。その後2カ月止まっていたのですが、最近また出血するようになりました。1日1回程度ですぐ止まりますが、2~3日続いています。鼻あかが気になるようで、鼻を指でつまむだけでも出ます。よい治療法を教えてください。



【答え】 鼻出血 -鼻炎がないか検査を-

幸田耳鼻咽喉科 院長 幸田 純治(阿南市富岡町今福寺)

 鼻はほこりなどの侵入を防ぐフィルターの役目のほか、冷たい乾燥した外気を加温加湿して気管に送り込む機能があります。このため鼻粘膜の毛細血管には多量の血液が循環しています。この鼻粘膜がいろいろな原因で傷害を受けると鼻血が出ます。

 最も多いのは鼻ほじり、鼻いじりにより、粘膜に傷がついて起こる出血です。花粉症などのアレルギー性鼻炎や副鼻腔(びくう)炎があると、鼻がムズムズするため鼻を触りすぎて出血が起きやすくなります。

 小児の場合は、豆類やおもちゃなどの異物を鼻に入れて出血することもあります。まれですが、腫瘍(しゅよう)が原因になることもあります。上顎(じょうがく)がんなど成人の腫瘍だけでなく、若年性鼻咽腔血管線維腫といった十歳代の小児に生じる腫瘍もありますので注意が必要です。

 このような鼻粘膜の局所の状態が出血の原因となる以外に、全身的な原因で出血することもあります。白血病や血友病などの血液の病気、肝硬変、腎(じん)不全などで血液が固まりにくくなった場合がそうです。

 さて、ご質問のお子さんは、すぐに止血するとのことですから、血液の病気が原因ではないと思われます。ただ、鼻あかが気になるようですので、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎が隠れている可能性があります。鼻水、鼻詰まりなどがある場合は、耳鼻咽喉科で再度診察を受けてください。

 出血を止める最大のポイントは、どこから出血しているかを確かめることです。最も一般的な部位は、鼻腔を左右に分ける壁(鼻中隔)の前方のキーゼルバッハと呼ばれる部位からの出血です。ここは、もともと血管が網目状に集中しているうえ、鼻孔に近いために乾いたり、手指の刺激で出血したりしやすく、鼻出血全体の7~8割を占めるといわれています。

 この部分からの出血なら、とりあえず綿花やティッシュペーパーを鼻腔に詰めて、鼻翼(小鼻)を両側からつまんでみてください。口で呼吸させ、十分程度押さえておけば通常は止まります。親が慌てれば子供も興奮し、かえって出血を増すことになります。

 耳鼻咽喉科での止血処置には、ガーゼなどによる圧迫のほか、薬品や電気凝固器による焼き付けがあります。これは、硝酸銀やクロム酸などの腐食性のある薬品を塗って出血部分を焼いたり、電流を流して出血している血管を凝固したりする方法です。出血しにくくするにはよい方法ですが、止血したあとにかさぶたができ、何日か後にこれが取れるときに再び出血することもあります。このため一度の処置で完全に止血してしまうことはなかなか困難です。

 他にべロックタンポンといって、鼻の奥にガーゼを詰める止血法や、手術により顎動脈や篩骨(しこつ)動脈にクリップをかける方法もありますが、これらは入院が必要な重度の出血の患者が対象です。

 ご相談のお子さんのように焼き付け後に何度も出血する場合には、耳鼻咽喉科をもう一度受診して、鼻炎がないかチェックしたうえで、止血処置を繰り返してもらってはいかがでしょうか。

徳島新聞2001年4月1日号より転載

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