【答え】 包茎 -症状がなければ問題なし-
徳島大学病院 泌尿器科講師 高橋正幸
ご質問にありますように、亀頭が包皮で包まれている状態を包茎と呼びます。包茎には真性包茎と仮性包茎があります。真性包茎は、包皮先端の皮膚の口の部分が狭く、包皮を手前(陰茎の根元の方向)に引っ張っても包皮をむくことができず、亀頭が見えない状態のことをいいます。仮性包茎は、普段は包皮が亀頭にかぶっていますが、容易に包皮をむいて亀頭が見える状態のことです。
生まれた時には、どの子どもも包皮輪は狭く、包皮と亀頭の間には生理的癒着(ゆちゃく)があるために、包皮をむくことができない真性包茎の状態ですが、これは病気ではなく生理的な包茎で、正常の状態です。その後、亀頭と包皮の間に黄白色の垢(こう)(あか)がたまり、包皮と亀頭の間の生理的な癒着が自然にはがれていきます。
日本の検診による統計では、1歳までの乳児期は86%、3歳児で34%、高校生で25%が真性包茎といわれていますが、外国のデータでは、17歳で99%の子どもの包皮はむけると報告されています。つまり、大部分のお子さんは、思春期になると陰茎の成長や勃起(ぼっき)などの作用により、包皮輪が広がり、包皮と亀頭の間の生理的癒着がはがれ、自然に包皮がむけます。
ご質問の3歳の男の子ですが、これまでに、おちんちんの先、あるいは全体が赤く腫(は)れて、痛がったり、下着に膿(うみ)が付いていたりしたことはあるでしょうか?また、排尿時に包皮と亀頭の間に尿がたまり、おちんちんの先端が風船のように大きく膨らんで排尿しているでしょうか?どれも当てはまらなければ、すぐに対処することはありません。特に、優しく包皮を手前に引っ張ってみて、亀頭の先端に、おしっこが出てくる外尿道口と呼ばれるスリット状の尿道の口が観察できれば問題ありません。
何の症状もないのに、無理に力を入れて包皮を引っ張ってむこうとすると、包皮先端の皮膚が裂けて出血したり、亀頭と包皮の間の生理的癒着がはがれてしまい、その後に再度癒着したりします。このような操作により、包皮先端が硬く厚くなり、瘢痕(はんこん)化してしまうことがあります。結局、自然に治る生理的な包茎が、病的な本当の意味での真性包茎になってしまうことがありますので、注意が必要です。
おちんちんが不潔な状態が続くと、細菌感染を起こして、包皮が赤く腫れることがあるので、普段からのケアが大切です。入浴時にシャワーでおちんちん全体をすすぎ、少量の石けんを泡立てて、包皮先端の皮膚から陰のうにかけて、手やスポンジで優しく洗ってあげてください。
もし、おちんちんが赤く腫れた経験があったり、おしっこをする時におちんちんの先が大きく膨らんだりするなら治療が必要です。
主に三つの方法があります。まず一つ目は、お風呂などで、包皮を根元の方へ皮膚をずらすように、ゆっくり引っ張り毎日少しずつむいていく方法です。決して無理にむいてはいけません。二つ目は、泌尿器科で包皮先端の狭い部分を手術器具でゆっくり広げる方法です。ただ、これはお子さんが怖がって難しいことが多いように思います。三つ目の方法は、包皮を根元に向かって、痛みのない程度に引っ張り、包皮先端の狭い部分に、ステロイドを含む軟こうを1日に2~3回塗る方法です。これを4~6週間続けることで約80%のお子さんの包皮がむけるようになります。これでも効果がなければ、泌尿器科で手術になります。
手術の方法は幾つかあり、手術によっては包皮の形が不自然になり、余計に悩むことがあります。徳島大学では、包皮を切除せずできるだけ自然な形になるような手術を行っていますが、先に挙げた三つの方法が有効であることが多いため、1年間に行う包茎の手術例はわずかしかありません。
徳島新聞2011年3月27日号より転載