【答え】 汗疱 -保湿剤・軟膏が効果的-
戸田皮膚科医院 院長 戸田 則之(徳島市安宅1丁目)
ご質問で述べられている症状や経過をもとに診断することは非常に難しいのですが、考えられる皮膚病について説明します。
まず最初に症状を整理してみますと、出現の時期は違いますが<1>爪の変化を伴う手・足のかゆい皮疹(ひしん)<2>黒ずんだ右足小指の変形した爪<3>かさぶたを伴ったかゆい頭部の皮疹-の3つに分けられると思います。
<1>についてですが、夏の時期にかゆみがあって水膨れを伴う皮疹が手に出現し、その後、足にも出てきていることから最も考えられる皮膚病は汗疱(かんぽう)です。
この病気は手のひら、指の間、足の裏に、明らかな誘因がないのに水膨れが出たり消えたりする病気で、小さな水膨れが多発して薄く皮がむけるものから、大きな水膨れになって赤みやかゆみを伴うものまで、その程度はさまざまです。
夏や季節の変わり目に出たり消えたりするのが特徴で、かきつぶすことにより痛みを伴うこともあります。また、水膨れを繰り返しているうちに皮膚が硬くなっていくこともあり、爪の周囲に皮疹が繰り返しできると、爪の変形をきたすこともあります。
原因は不明ですが、金属アレルギーやアトピー素因など体質的なもの、多汗症、ストレスなどとの関連性が認められた人もいます。この病気は一見、手足の水虫に間違われやすいのですが、決して人にうつることはありません。
治療法は、軽症の場合は尿素配合のクリームやサリチル酸ワセリン、その他の保湿剤を1日数回塗れば十分です。また、かゆみの強い場合は副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)を使用し、じくじくしていればその上に亜鉛華軟こうの重ね塗りをすれば効果的です。
重症の場合は、手のひらや足の裏は皮膚からの薬の吸収が悪いために強力なステロイド剤が必要で、塗り薬とともにかゆみを抑える抗アレルギー剤の内服が有効なこともあります。
また、最も間違えやすい病気である水虫は、皮膚科を受診し、顕微鏡検査で菌糸を見つけることで診断できます。そのほか、水膨れが見られるものに掌蹠膿庖症(しょうせきのうほうしょう)の初期や手足口病などのウイルス疾患が挙げられまずが、経過や皮疹の部位、症状などで区別されます。
<2>は、足の小指が黒ずんで変形したとのことですが、この症状が汗疱と関連したものなのか否かは、明らかではありません。小児などでは、靴との機械的な摩擦で小指の爪が変形してくることもしばしば見られます。
<3>については、以前に頭皮にかさぶたができ、かゆくて悩んでいたとのことですので、この症状とでこぼこのある爪の変形に注目すると、乾癬(かんせん)という病気も考えなくてはならない一つの疾患です。
いずれにしても、近くの皮膚科専門医に相談されれば、きっと適切なアドバイスがいただけるものと思います。
徳島新聞2006年11月19日号より転載