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【答え】 デスモイド腫瘍・子宮内膜増殖症状

-悪性化への監視が重要-


国府藤田産婦人科 院長 藤田 泰彦(徳島市国府町中)

 質問の女性は、すでに診断されている帝王切開術後の腹部手術創から発生したデスモイド腫瘍と子宮内膜増殖症に対する今後の経過について悩んでいるようですので、セカンドオピニオン(別の医師の意見)として解説します。実際の治療方針については、主治医とのインフォームドコンセント(十分な説明と同意)が大変重要になります。

 まず、腹壁デスモイド腫瘍ですが、これは腹壁の筋腱膜(きんけんまく)から発生する線維腫で、腹壁類腱腫とも言います。あまり聞き慣れない、比較的まれな病気ですが、若い女性や経産婦に多く発生し、患者の80%を占めるとも言われています。原因は全く不明で、遠隔転移はないものの、周辺にゆっくりと浸潤性発育します。単純な病巣切除では、ほぼ100%再発し、完全に治し切る手術が不可能となるようです。

 したがって、この腫瘍は本来悪性ではありませんが、長期にわたる局所浸潤性と再発性から悪性良性境界腫瘍とも考えられ、厄介です。質問の女性の場合は、現在の腫瘍サイズと症状から、すぐに手術とは言わないまでも、いずれは外科または形成外科での手術が必要となります。その際には、初回の手術がすべてとも言われていますので、手術前の十分な病巣の広がりの診断と病巣の広汎(こうはん)な完全摘出が大変重要になると考えられます。広い腹壁欠損部に対しては、人工のメッシュなどの合成材料が進歩しており、術後はそのまま留置しても心配はないようです。

 次に子宮内に発見されたポリープは、同時に認められた子宮内膜増殖症の一つのタイプで、両者は全く同じ病態です。症状としては、質問の女性に見られるような月経出血量が大変多くなる過多月経、あるいは不正出血の断続をもたらします。重症貧血をもたらす過多月経では、子宮筋腫と子宮腺筋症(子宮内膜症)が一般的ですが、最近では膣(ちつ)内から子宮や卵巣の状態や病変をより詳細に観察できる経膣超音波診断法の普及によって、子宮内膜の肥厚だけを特徴とする子宮内膜増殖症の検出が、随分と容易になってきました。

 正常な月経周期では、女性ホルモンのうち卵胞ホルモン(エストロゲン)がまず内膜を増殖させ、排卵によって後半14日間は内膜過形成を抑制する黄体ホルモンが十分に分泌され、内膜増殖が適正に制御されて正常な月経出血量となります。一方、内膜増殖症では、種々の原因による排卵障害のためエストロゲンによる刺激のみが積み重なり、黄体ホルモンによる増殖抑制が効かずに過度の内膜増殖が進み、各人の内膜細胞のエストロゲンに対する感度にもよりますが、異常な厚みとなります。

 この排卵障害の原因には肥満、ストレス、自律神経失調症、更年期における卵巣自身の機能低下などがあって複雑です。この病気も本来は良性ですが、確定組織診断で、腺細胞が正常から変化した異形増殖症の場合は、約25%が数年で子宮体がんに変化するとの報告もあり、前がん状態のときに子宮摘出するのも、治療法の一つとなります。その他の場合は、多くは周期的な黄体ホルモン投与やピルの服用、あるいは診断を兼ねた内膜全面掻爬(そうは)術などで、生理出血量が正常化されます。

 症状再発の場合には、子宮内膜細胞診、あるいは組織診による悪性化の監視が重要となります。

徳島新聞2003年2月9日号より転載

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