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【答え】 股関節の痛み -専門医検査で診断確定を-

新田整形外科 新田 英二(徳島市八万町弐丈)

 股関節に痛みがあると体重がかけられず、関節の動く範囲が制限されます。歩行・家事・育児などの日常生活動作に支障が生じ、生活の質の低下を招きます。

 股関節は、寛骨(かんこつ)(一般には骨盤)、大腿骨(だいたいこつ)と呼ばれる骨と、その周りに筋、靭帯、関節包(関節を包む袋)、血管、神経などが付いていて、大腿骨の端が骨盤のくぼみに組み込まれているような構造をしています。骨以外の組織は、レントゲン写真には写りません。

 両足で立っているときは、体重が両側の股関節に同じ力がかかっています。しかし、歩くときには体重の重心が動くので、片足で立ったときは体重の約四倍の力が片方の股関節にかかるようになります。

 質問の女性は妊娠中期から股関節に痛みが始まったということですが、子どものときに股関節の異常(先天性股関節脱臼(だっきゅう)など)や青年期に股関節痛がなかったでしょうか。臼蓋(きゅうがい)形成不全(骨盤のくぼみが小さく、浅くなっている病気)などがあると、若いときでも股関節に痛みが出てきます。その症状は股関節に、長い時間負担がかかったときの股関節の疲れた感じや痛みで、安静にすれば楽になります。

 質問の女性は、赤ちゃんの体重が増えて股関節に負担がかかり、臼蓋形成不全の症状が出てきた可能性があります。また、一過性大腿骨頭萎縮(いしゅく)症という病気もあり、これは妊娠中に股関節の痛みが始まり、3~6カ月ほどで痛みがなくなります。産後、整形外科で診察を受けられたとのことですので、レントゲン写真だけでは判断できないほどの変化であったのかもしれません。

 そのほかに▽関節ねずみ-関節の表面がはがれたものや骨・軟骨の小さな塊などが関節の中を動いて関節の間に引っかかり痛みを起こす▽弾発股-関節の周りの軟部組織が厚くなり、関節を動かすときに音がする▽関節唇(関節脱臼を防ぐ関節の縁取り)の障害-などがあると、質問の女性のような症状が出る可能性があります。病気の原因が一つだけでもなく、いくつか組み合わされていることもあります。いずれにしても、専門医の診察と検査を受け、診断を確定する必要があります。

 次回の妊娠で痛みが増強するかもしれないという不安に対してのアドバイスは、専門医の確定診断の後に産婦人科医師と相談し、患者さんの多くの情報を出産する医療機関と共有されることを勧めます。

徳島新聞2002年6月9日号より転載

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