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【答え】 多汗症 -外用療法で症状改善-

藤本クリニック 院長 藤本 篤夫(板野郡北島町鯛浜)

 思春期を迎えるころから、手の平や足の裏にひどく汗をかく、と訴えてくる方が時に見られます。このような「掌蹠(しょうせき)多汗症」の患者さんはそれほど多くありませんが、診察時に手をハンカチでふいてもらって、1~2分もすれば汗の粒が目に見えるほど大きくなり、ついには汗がしたたり落ちる方もいます。

 これほど症状がひどくなると、鉛筆が持ちにくい、細かい手作業ができない、他の人と握手をするのが苦痛であるなどの悩みを抱くことになります。

 多汗の見られる部位としては、手の平や足の裏のほか、わきがあります。これらの部位には、皮膚内にエックリン汗腺と呼ばれる汗を生じる器官があり、精神的緊張で交感神経が刺激され、発刊が促されます。

 このため、多汗症の治療法として、まず汗を作る場所であるエックリン汗腺の働きを抑える方法、次にエックリン汗腺の機能を支配している交感神経の働きを抑制する方法が考えられます。

 第一の治療法としては、外用療法と「イオントフォレーシス」があり、第二の方法として手術療法があります。

 それぞれの治療法を簡単に紹介します。

 1.外用療法  10%グルタールアルデヒド、20%塩化アルミニウム水溶液などを患部に塗ります。これらの外用剤は、エックリン汗腺の働きを抑えると同時に、汗の出口(肝管)をふさぎます。

 2.イオントフォレーシス  水道水を少量入れたバット(平皿)に手足を浸し、5~10ミリアンペアの直流電流を流します。1回に20~30分間通電し、これを週3回行います。効果があれば維持療法として週1回の通電を続けます。

 以上の治療法は、副作用が少なく安全な治療法であり、多汗症の多くは満足のいく改善がみられるようです。しかし、それでも効果のない患者さんには、次のような手術療法がありますが、県内で手術を行っている医療機関は少ないようです。ここでは、報告されている文献を参考に紹介します。

 3.交感神経節ブロック  患部がずきずきと痛む慢性の疼痛(とうつう)に対する治療として、ペインクリニックで広く行われています。その効果として、鎮痛作用以外に発汗停止がみられるため、多汗症の治療としても期待できます。全身麻酔は必要なく一泊の入院で済むため、有用な手技ではありますが、手の平の多汗症の場合は、無効例や再発例もみられるようです。

 4.胸くう鏡下交感神経節焼灼(しゃく)術  10年ほど前から普及し始めた手技で、全身麻酔をして胸部から胸くう鏡を挿入し、胸部交感神経節を観察しながら焼しゃくします。術後の傷あとは小さく、入院も5日程度で済みますが、手の平以外の多汗が発生することもあります。

 県内では、昨年2月から徳島大学医学部付属病院の痲酔科と第二外科で、この焼しゃく術による治療が始められており、現在まで数人の患者さんが治療を受け、どの人も著しく改善されているようです。

 このように掌蹠多汗症の治療は、手術も含めていろいろな方法が考えられています。患者さんはまず外用療法を試み、なお改善されない場合は手術を受けられることをお勧めします。

徳島新聞1999年2月14日号より転載

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