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【答え】 多血症 -まず正確な診断が重要-

矢田医院 副院長 矢田健一郎(吉野川市川島町三ツ島)

 血液は、血しょうと呼ばれる液体成分と、赤血球、白血球、血小板の血球成分からなります。これらの血球は、骨の中にある骨髄という組織で造血幹細胞という細胞から作られます。多血症とは、主に赤血球が増える病気で、最近では赤血球増加症ともいいます。

 血液中に占める赤血球の割合をヘマトクリット値、赤血球中の血色素量をヘモグロビン値と言い、多血症の目安は一般に、赤血球数600万/マイクロリットル(女性550万/マイクロリットル)、ヘマトクリット値55%(同50%)、ヘモグロビン値18.0グラム/デシリットル(同16.0グラム/デシリットル)のいずれかを超えた場合となります。

 多血症には<1>骨髄増殖性疾患(造血幹細胞の異常で不必要に血球が増える病気)としての真性多血症<2>他に原因となる病気があり、そのために赤血球が増えてしまう2次性多血症<3>本当は赤血球が増えていないのに、あたかも増えているように見える相対的多血症(別名ストレス多血症)-の3種類があります。

 <1>は、赤血球のみならず白血球や血小板の増加も伴い、脾臓(ひぞう)が腫れることが多いです。確定診断には骨髄検査などの特殊な検査を必要とします。

 <2>は、慢性的な肺の病気や先天性の心臓疾患など、慢性的に酸素不足になる病気があると、体が酸素を補おうとして赤血球が作られすぎるものです。まれですが、エリスロポエチンという赤血球増殖因子を産生する腫瘍が原因のこともあります。これらの元の病気が治療できれば改善することが多いです。

 <3>は、ストレスが原因と考えられていますが、詳しいメカニズムは不明です。ほとんどは、肥満や高血圧症、高尿酸血症などを有する喫煙習慣のある中年男性にみられ、これら生活習慣病の危険因子が除かれると改善することがあります。

 多血症の症状としては、赤血球量の増加が著しい場合には頭痛や赤ら顔、耳鳴りやめまいが起きることがあります。真性多血症ではそれらの症状以外にも、高血圧、皮膚のかゆみ、胃潰瘍、鼻出血やあざになりやすいといった出血傾向がみられることがあります。

 また、赤血球量の増加とともに血小板が増加して血液の粘度が変化するため、無治療で放置すると脳梗塞や心筋梗塞などの原因になる血栓ができやすくなります。真性多血症の場合、経過中に他の血液の病気に移行する場合がありますので、定期的な経過観察が必要となります。

 真性多血症の治療としては、瀉血(しゃけつ)(定期的に血を抜くこと)を行います。しかし、瀉血が頻回になる場合や、血栓による症状や既往がある場合、高齢者の場合には、化学療法(抗がん剤)を用いて増えすぎた血球数をコントロールする必要があります。また、患者によっては血栓症を予防する薬の使用を必要とする場合もあり、専門的な治療が必要となってきます。

 以上のように、多血症にはいろいろな種類があり、種類によって治療法や生活上の注意点、予後も大きく異なりますので、まずは正確な診断が非常に重要となります。そのためには専門的検査が必要な場合もありますので、主治医に相談するか、血液内科専門外来を受診することをお勧めします。

徳島新聞2012年1月22日号より転載

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