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【答え】 子どものO脚・X脚-90%以上は自然に矯正-

徳島大学病院整形外科 安井夏生

 子どものO脚やX脚を心配して受診されるお母さんが増えています。近所の人に「歩き方がおかしい」と言われたり、保育園で「お宅の子はよく転ぶ」と言われたりしたことがきっかけで、病院に来られることが多いようです。

 病院では、長い時間待たされたあげく「病気ではありません」と相手にしてもらえないことが多く、家に帰るとお父さんらから「もっと大きな病院できちんと調べてもらいなさい」と言われて、困ってしまうことにもなりかねません。

 両足をそろえて立ったときに、両ひざの間にすき間ができるのをO脚といいます。反対に左右のひざがくっついて当たってしまうのをX脚といいます。O脚もX脚も程度が軽ければ、全く問題なく一生を過ごすことができます。どちらかといえば、日本人にはO脚の人が多く、西洋人にはX脚気味の人が多いようです。

 赤ちゃんはO脚が普通で、2歳ごろまでその状態が続きます。これを「生理的O脚」といいます。2歳を過ぎると自然に矯正され、3歳のころには逆に、少しX脚になるのが普通です。幼稚園の運動会などで子どもが並ぶ姿を見ると、ほとんどがX脚であるのに気付くと思います。これを「生理的X脚」といい、小学校低学年まで続きます。小学校高学年から中学生になると、自然に矯正され真っすぐな脚になります。

 それでは、どの程度のO脚やX脚は生理的で、どの程度になると病的といえるのでしょうか。

 2歳以下の場合、両足をそろえて立たせ、両ひざの間に2~3センチのすき間があく程度なら心配はありません。自然に矯正されるでしょう。4~5歳では、両ひざをそろえて立たせて両くるぶしの間が2~3センチあく程度のX脚ならば、これも心配ありません。レントゲン検査や余分な血液検査を行う必要はないでしょう。

 O脚やX脚を心配して病院に連れてこられる子どもの90%以上は、生理的なO脚やX脚であることが多いのです。そのため、全く治療の対象にならないことを、お母さんに理解してもらうことが大切です。

 2歳以下でも、両ひざの間に5センチもすき間のあくO脚は、整形外科を受診することをお勧めします。ブラウント病と呼ばれる、真性のO脚の可能性があるからです。この場合は、半年に一度くらいずつ経過観察をして、4歳くらいまで待っても改善傾向がなければ手術を行うこともあります。

 くる病がO脚やX脚の原因となることもあります。最近は食生活が原因のくる病はほとんどなく、大部分が遺伝性のくる病です。ビタミンD抵抗性くる病というものもありますが、これは血液検査で診断できます。その場合でも、活性型ビタミンDを投与すると大抵のO脚は改善します。

 そのほか、骨系統疾患に伴うO脚やX脚もありますが、この場合は低身長などの全身性の発育障害がまず問題になります。

 いずれにしても、大部分の子どものO脚やX脚は治療の対象にならないものです。怪しげな装具療法やマッサージなどは、効果がないだけでなく、子どもの精神発達に悪影響を及ぼすため慎むべきです。「親としてできること」を無理に探すのではなく、おおらかに子どもの発育を見守る気持ちが大切です。

子どものO脚・X脚

徳島新聞2009年6月21日号より転載
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