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【質問】 水虫がうつらないか心配

 34歳の男性です。長年、水虫を患っています。市販の薬を使っていますが、さぼりがちでなかなか治りません。多少かゆくても、独身時代はよかったのですが、結婚して子どもが生まれて歩くようになると、カーペットや風呂の足ふきマットから、子どもに水虫が感染するのではないかと心配しています。私も子どもも、夏場は特に室内で、はだしで過ごす機会が多いので、余計に心配です。水虫は、他人に感染する病気なのでしょうか。子どもにうつらないように、何か気をつけなければならない点があれば教えてください。



【答え】 足白癬 -子どもに感染の恐れ 清潔に-

さかお皮フ科クリニック 坂尾 佳久(徳島市国府町井戸)

 水虫は、正式には足白癬(はくせん)と呼ばれ、白癬菌というカビの一種が、皮膚の一番外側の角質層にすみつくことによって起こる病気です。白癬菌は、角質層を構成するケラチンというタンパク質を分解して栄養としています。角質層の厚さは体の部位によって違い、手のひらや足の裏は最も厚く、水虫の場合、このように厚い角質層に菌がいるため、外から薬を塗っても中まで浸透しにくく、治りにくいと考えられています。

 足白癬には、3つのタイプがあります。最も多いのは、主に足の指の間にできる趾間(しかん)型で、皮がむけたり、白くふやけたようになったりします。また、土踏まずや足の外側などにかなりのかゆみを伴い、小さな水疱(すいほう)ができ、丸く皮がむけたりする小水疱型、足の裏全体の皮が厚くなってかさかさになる角質増殖型もみられます。

 足に水虫があると、足以外の場所にも伝染します。顔面、体、四肢にできた白癬は、体部白癬と呼ばれ、俗に「ぜにたむし」とも呼ばれ、丸い輪のような発疹(ほっしん)ができます。また、同様の発疹が股間(こかん)部にできた場合は、股部白癬(いんきんたむし)と呼ばれます。頭部やつめに白癬が感染することもあります。これらの白癬は治療しにくいタイプで、内服薬を使用する場合があります。

 水虫は、その正体がカビであるため、湿気の多いジメジメしたところを好みます。足の指の間や毛穴などは、白癬菌が増殖するために最適な温度と湿度が保たれているので、水虫にとって最高のすみかです。ですから、水虫に好かれるのは、靴をはいている時間が長い人、中でも汗かきで、足の指が太く、指と指のすき間が開いていない足の持ち主です。

 質問の通り、水虫は感染する病気と考えられています。子どもの足に水虫ができることは少ないですが、水虫の患者のいる家庭では、子どもの発症率が高いといわれています。

 水虫の予防、治療について説明します。白癬菌は、水虫の足からはがれ落ちた鱗屑(りんせつ)の中で、数カ月も生き続けることができます。はがれた鱗屑を掃除しないでおくことは、いわば白癬菌を“弁当付き”で飼っているのと同じことです。

 また、水虫の人が使う風呂場の足ふきマットなどは、足からはがれた皮がたくさん付いているので、白癬菌もうようよ生息しています。その菌に触れれば必ず感染するわけではありませんが、予防に越したことはありません。

 家族への感染を防ぐには、畳やじゅうたんなどはよく掃除し、マットや靴下は洗濯し、十分乾燥させましょう。また、スリッパや足ふきマットも、できれば専用のものを用意するなど、細心の注意が必要です。

 靴は通気性のよいものを選び、時々、直射日光で乾かしてください。常に足の清潔を心掛け、入浴時には普通のせっけんを使って、指と指の間まで丁寧に洗いましょう。足の蒸れは水虫悪化の原因となります。靴下は吸湿性の高いものを使用し、できるだけ足の乾燥を心掛けてください。

 水虫治療の基本は、薬を毎日正しく塗ることです。白癬菌は、患部周辺の正常な皮膚にもひそんでいます。患部より広めに塗りこみ、2~3カ月以上治療を続けます。足の裏の角質層が新陳代謝で新しくなるのに、約3カ月かかるといわれています。症状がなくなっても、しばらく薬を塗り続け、完全に白癬菌を追い払うことが重要です。

 なお、質問の内容から、相談者は水虫と思われますが、足の裏や足指の病気は、水虫だけとは限りません。かぶれ、汗疱、掌蹠(しょうせき)膿疱症など、水虫とよく似た症状を示すものもあります。素人判断で水虫と思い込み、市販の水虫薬を塗って、かぶれなどを起こし、かえって症状を悪化させている人も少なくありません。一度、専門の医師に相談されることをお勧めします。

徳島新聞2004年7月4日号より転載

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