【質問】足が重く感じる
60代の女性です。足の血管がでこぼこと浮き出したり、網目状に細い血管が青く見えたりするようになりました。痛みやむくみはなく気にしていませんでしたが、足が重くなってふらつくので受診すると、下肢静脈瘤(りゅう)と診断されました。足の疲れやだるさ、重さなどの症状は、手術で完治するのでしょうか。
【答え】症状あれば手術勧める
徳島県立中央病院心臓血管外科 筑後文雄
下肢静脈瘤とは、足の静脈が浮き出てきて目立つようになる病気です。<1>血管がぼこぼこと浮き出したようになる伏在型静脈瘤<2>網目状に細い血管が青く見える網目状静脈瘤<3>赤い血管がクモの巣のように広がって見えるクモの巣状静脈瘤-などの種類があります。
下肢静脈瘤の原因は、静脈にある逆流防止弁が壊れることです。足の静脈は足から心臓へ血液を流す働きをしていますが、重力に逆らって血液を流すために逆流防止弁が備わっています。正常の静脈は、逆流防止弁があるために足から心臓への一方通行の血流になっています。
下肢静脈瘤はこの逆流防止弁が壊れており、心臓に戻るはずの血液が足の静脈によどんでしまうのです。どうして逆流防止弁が壊れるのかはよく分かっていませんが、長時間の立ち仕事や妊娠出産は誘因になると考えられています。
残念ながら静脈瘤が自然に治ることはありません。飲み薬で治すこともできません。治療にあたっては、静脈瘤そのものに対する処置と、逆流防止弁の壊れた静脈に対する処置を考えなくてはいけません。
静脈瘤そのものに対しては、切除や硬化療法(浮き出た静脈に硬化剤という薬を注射する方法)が行われます。軽症の静脈瘤は硬化療法だけで治すことができます。静脈瘤そのものに対するレーザー治療(レーザー硬化療法)はまだ保険適応外であり、広くは普及していません。
逆流防止弁の壊れた静脈に対しては、<1>高位(こうい)結紮(けっさつ)術(静脈を糸で縛って逆流をなくす)<2>ストリッピング手術(弁の壊れた静脈を小さな手術創から抜き取る)<3>血管内レーザー焼灼(しょうしゃく)術(静脈内に極細のレーザーファイバーを入れ、静脈を内側から焼いて閉塞(へいそく)させる)-の三つがあります。
昔は静脈瘤手術のために1週間ほどの入院が必要でしたが、現在はどの方法でも短期間の入院あるいは日帰りでの手術が可能です。血管内レーザー焼灼術は2011年から保険適応となりました。皮膚を切開せずにストリッピング手術と同じ効果が得られ、低侵襲治療方法として注目されています。
下肢静脈瘤は良性の病気で、治療をしなくても生命に関わることは通常ありません。しかし見た目が気になりますし、ご質問のように足の疲れやだるさ、重さなどの症状が出ることがあります。
また、静脈瘤が悪化しますと、足の皮膚に湿疹ができたり皮膚が茶色に変色したりし、重症例では皮膚潰瘍といって皮膚が破れてしまうことがあります。<1>見た目が気になる<2>疲れ、だるさ、重さなどの症状がつらい<3>皮膚に異常を起こしている-といった場合には治療をお勧めします。
見た目が気にならず、症状や皮膚の異常を認めなければ治療の必要性はありません。足の症状が静脈瘤によるものであれば、治療によって改善が期待できます。しかし、症状が静脈瘤によるものでないこともあります。治療でお悩みの場合には、専門医(血管外科または心臓血管外科)の診察を受け、よく相談されることをお勧めします。