【質問】便意催しても出ない
妊娠3カ月です。妊娠してから便秘に苦しんでいます。便意を催してトイレに行っても便はなかなか出ません。腹痛もひどくなったため、病院で薬を処方してもらいました。ほかにヨーグルトやバナナを食べるなどしてお通じが良くなるように努力していますが、状況はあまり変わりません。妊娠後期には特に便秘がひどくなるといわれていますが、改善させる方法はあるでしょうか。
【答え】食物繊維を摂取し歩く
徳島市民病院整形外科 中野俊次
私たちが食べた食物は、口の中でよく噛(か)み砕かれ唾液と混じり合い、食道を通過して胃で消化されます。次に小腸に送られさらに消化され、ほとんどの栄養分がここで吸収されてしまいます。残った物が大腸に送られ、徐々に水分が吸収されて便が形成されます。
便が何日も大腸に留まると水分の吸収が進み、小さく、固くなります。排便の仕組みは複雑で、さまざまな因子の影響を受けます。通常、胃が食物で刺激されると反射により大腸の蠕動(ぜんどう)運動が起こって、大腸の中で便を動かし、やがて直腸に達すると神経を介して大脳で便意を起こします。
食物を食べてから排便するまで、約半日から3日間を要します。便秘症とは3日以上排便しない場合を言いますが、単に日数だけではなく、頭痛、腹部膨満感などの症状、排便時の腹痛によって排便困難になり、日常生活に支障を来す状態を言います。
便秘は原因と症状により、器質性便秘と機能性便秘に分けられます。器質性便秘は、大腸小腸の炎症、腫瘍、癒着などによる通過障害を起こすもので、さらに卵巣腫瘍、子宮筋腫、増大した妊娠子宮による外側からの圧迫によるものも含みます。
機能性便秘は三つに分けられます。▽神経刺激により大腸運動が亢進(こうしん)し、便秘と下痢を繰り返して腹痛を伴う痙攣(けいれん)性便秘▽神経刺激の抑制により大腸運動が低下して起き、水分吸収が長くなり便が固くなる弛緩(しかん)性便秘▽便が直腸に達しても排便反射が起こらず、便意があるのに我慢する人に多い直腸便秘-です。
女性は男性に比べて腹筋が弱く、骨盤の形状、月経周期に卵巣から分泌される黄体ホルモンの影響によって便秘を起こしやすいとされています。黄体ホルモンは、消化管の蠕動運動を低下させる作用があり、弛緩性便秘を引き起こします。
妊娠すると胎盤から多量の黄体ホルモンが作られます。妊娠が進むと大きくなる子宮は器質性便秘を起こします。しかし、これらの症状は、妊娠の生理的な問題で、約半数の妊婦さんが訴える症状です。
予防と治療は大体同じです。まず朝の便意を我慢しないこと、朝食を必ず取り、早起きして時間の余裕をもつこと、また、仕事中でも便意を感じたら我慢しなくて良い環境をつくってください。
食物繊維を十分に取ること。食品表を参考にして20グラム/日以上、普段の食事から摂取してください。同時に十分な水分も必要です。もう一つは歩くこと。歩数計測してプラス千歩を目標にし、ストレッチも組み入れてください。歩行運動は安産にもつながります。
妊娠中でも比較的安全に使用できる薬物治療もあります。薬物治療は、必ず主治医と相談して行ってください。