検査で正常、病気の可能性は
【質問】70代の女性です。2カ月前から尿に泡立ちが見られます。直径1センチぐらいの泡が出ることが多く、大きいもので直径3センチほどです。食後に泡立つことが多く、空腹時は出ないので食べ物と関係があるのでしょうか。尿検査では、異常が見つかりませんでしたが、何かの病気でしょうか。
鴨島川島クリニック 川原和彦 先生
食生活影響、腎臓病の疑いも
【答え】ペットボトルに水を入れて振ると、泡ができますが、一瞬で消えてしまいます。水に塩や砂糖を入れて振っても同様です。しかし、お茶やコーヒーだとどうでしょうか。できた泡は、なかなか消えません。これは、液体に含まれる「界面活性(表面活性)物質」の働きによって起こる現象です。
界面活性物質は、お茶やコーヒーのほか、汚れを落とすせっけんや洗剤などに含まれています。せっけんが泡立つのは、液体に含まれる界面活性物質が表面張力を弱めること、泡の膜に界面活性物質が並んで膜を強くすることで、空気を包み込みやすくなるためです。尿の泡立ちは、これと同じ仕組みで起こると考えられます。
「尿表面張力と尿中表面活性物質に関する研究」という論文によると▽全ての尿には界面活性物質が存在し、尿が酸性に傾くほど尿の表面張力が低下する▽正常な人も、脱水状態だったり、尿が濃縮したりするときは界面活性物質の濃度が増える▽尿タンパク自体が界面活性物質として作用する-などが指摘されています。
したがって、病気でない場合でも、尿が酸性に傾いている場合や、尿が濃縮された状態のときは、尿の泡立ちが認められる可能性があります。例えば、高タンパクな食事の摂取や内臓肥満・メタボリック症候群の人の尿が酸性化することが報告されています。尿の濃縮は、水分摂取が少なかったり、たくさん汗が出たりした場合に、濃い色の尿が出ることで観察できます。
尿タンパクは1日150ミリグラム未満だと正常で、健康な人もゼロではありません。一日の中でも、安静時には尿タンパクが少なく、運動時に多くなります。ネフローゼ症候群の患者さんには、いつも高濃度の尿タンパクが認められます。
また、慢性糸球体腎炎や糖尿病性腎症、高血圧、膠原(こうげん)病による腎障害などでもタンパク尿が認められます。これらの慢性腎臓病の診断には、尿検査、またはエコーやコンピューター断層撮影(CT)などの画像診断と血液検査による血清クレアチニン濃度の測定が必要です。
今回の質問では、2カ月前から尿の泡立ちが認められ、特に食後に多いということから、食べ物との関係も考えられます。尿検査で異常がなかったとすれば、ネフローゼ症候群は考えにくいと思います。しかし、慢性腎臓病では、1回の尿検査だけでは診断できないことがあります。尿の泡立ちが続くようでしたら、腎臓専門医を受診し、血液検査や尿検査を受けることをお勧めします。