突然黒く丸い物が視界に現れる
【質問】突然ぼんやり黒く丸い物が視界に現れて目が見えにくくなります。そして視界の端がギザギザ、ぎらぎらした状態が約20分から半時間続き、視界から消えます。頭痛や吐き気はないです。眼科を受診すると「目には異常がない。眼底検査では脳の異常も見当たりません」と言われ、「首の後ろの血行不良」との診断でした。20年前からの症状で、12年前には脳のMRI(磁気共鳴画像装置)検査でも異常なし。その後は受診していません。閃輝暗点(せんきあんてん)ではないかと思います。対策を教えてください。
鎌田眼科医院 鎌田光二 先生
頭痛が起こるケースも
【答え】症状から閃輝暗点を強く疑います。
閃輝暗点は、視野の中央部に、輝く点が現れ、ぎらぎらとした稲妻のような模様が波紋状に徐々に拡大し、見えない部分が生じる視覚症状です。
輝く部分と見づらい部分が混在し、ときには視野の半分が見えなくなることがあります。症状は通常20分から半時間ほど持続し、遅くても1時間以内に回復します。
その後に頭痛が起こるケースが多く、片頭痛の典型的な前兆の一つですが、頭痛、吐き気などを伴わないこともあります。質問者は頭痛が伴わないものに該当します。
閃輝暗点の発生メカニズムは解明されていません。「大脳皮質神経細胞の活動性異常が視覚の中枢がある大脳後頭葉から始まり、徐々に周辺に広がる」との説が有力で、後頭葉の血流低下があることも指摘されています。
閃輝暗点は眼球の異常によるのではなく、大脳皮質に生じた可逆性の脳局在神経症状です。それでも症状が出ると不安ですね。専門医の受診を勧めます。
まずは自分で症状が両目に起きているかどうか確認します。閃輝暗点は両目に現れます。
きらきらした光が見えたり、数分間視野が暗くなったりする症状が片目だけにあれば、眼球の硝子体や網膜や視神経の循環状態、頸動脈の狭窄(きょうさく)の検査が必要です。
頭痛を伴わない閃輝暗点は、まれに脳梗塞、脳腫瘍、一過性脳虚血発作など重篤な疾患のサインであることがあります。▽症状の持続時間が長かったり、極端に短い▽暗点がはっきりとしている▽発症の頻度が増えた―などの変化があった場合は、神経内科や脳神経外科、頭痛外来で精密検査を受けてください。症状に変化がなければ、経過観察も可能です。
閃輝暗点が起きたときの対処法はまずは安静にすること。経験的に頭痛、吐き気などが起きると予想されるときは、鎮痛剤や制吐剤を服用するといいです。視界が遮られ業務や自動車の運転に支障があれば、予防のためカルシウム拮抗剤などの投与を検討します。
閃輝暗点や片頭痛の誘発因子としては、精神的ストレス、疲労、感情変動、飲酒、チョコレートやチーズの摂取などがあります。これらを避けるようにしましょう。