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【質問】 顔のあざを取り除きたい

 19歳になる娘は、生後数カ月のころから右唇上に約1センチの薄茶色のあざがあります。皮膚科で以前、「あざの種類によっては、レーザー治療で毛穴が濃くなり、今より目立つことがある」と言われ、治療を断念しました。あざに盛り上がりはなく、年齢とともに濃くなってもいません。茶色のあざは取り除いてもまた出てくるとも聞きます。よい治療法はないでしょうか。



【答え】 血管系母斑・色素細胞系母斑 -部位により異なる治療法-

戸田皮膚科医院 戸田則之(徳島市安宅1丁目)

 一般的に「あざ」と呼ばれるものは大きく分けて、赤いあざ(血管系母斑(ぼはん))と黒いあざ(色素細胞系母斑)があります。赤いあざには、生後間もないころに出現し、次第に増大・融合してくる苺(いちご)状血管腫と、出生時から存在する単純性血管腫があります。

 一方、黒いあざには▽扁平(へんぺい)母斑▽色素性母斑▽太田母斑▽蒙古(もうこ)斑-などがあります。扁平母斑は、出生後、比較的早い時期に色素斑が明瞭になり、薄茶色か茶色で表面は平滑です。体幹・四肢に好発し、生涯消えることはなく、色調の変化にも乏しいあざです。

 色素性母斑は、出生時に既に生じている比較的大型で斑状の黒色のものから、後天的に生じる小型で茶色の「ほくろ」までを含め、バリエーションに富んでいます。

 太田母斑は、出生時に存在するものと思春期ごろに遅発するものがあり、顔面の三叉(さんさ)神経第1・2枝領域(目の周り)に出現します。淡青褐色調で、眼球結膜に青色の色素沈着が見られることが多いという特徴もあります。類似するものに、遅発性両側性太田母斑様色素斑があります。太田母斑に比べて青色調が弱く、どちらかといえば茶褐色を帯びています。

 また、蒙古斑は黄色人種に100%みられるとされていますが、出生時から生じる腰・臀部(でんぶ)の淡青色斑なので、学童期までに消失します。しかし、この部位以外に生じたものは異所性蒙古斑と呼ばれます。身体の成長に伴い、ある程度は淡色化するものの、自然消失は難しいといえます。

 黒いあざの治療ですが、色素性母斑は形状・部位によって▽単純切除▽剥皮(はくひ)術▽植皮術▽レーザー-などを行います。太田母斑と異所性蒙古斑の濃いものは、通常のレーザーより強力なQスイッチ付きレーザーの好適用といえます。

 これらの疾患における色素は、真皮という比較的深い位置にあります。Qスイッチ付きレーザーは、照射時間を非常に短くし、瞬間的なレーザー光の強さを高めることによって皮膚深達度を良くするので、色素を効率よく破壊するための効果が期待できます。

 一方、扁平母斑や肝斑(かんぱん)などは、皮膚の浅い位置に色素が存在します。Qスイッチ付きレーザーで色素の破壊はできますが、高い確率で再発する問題があります。レーザーで病変を破壊できないのではなく、再発のメカニズムが分かっておらず、それを防止できないから難しいのです。

 さて、ご質問の茶色のあざは扁平母斑ではないかと思われます。仮にレーザー治療を選択された場合、まず目立ちにくい部分に1回だけ試し照射を行います。それは個々にレーザー治療に対する反応が異なるからです。効果がある場合は全照射を行いますが、それでも数回照射が必要となることもあります。

 この治療は保険適用がありますが、大きさによって異なります。本症例の場合は約1センチですので、レーザーに対する自己負担額は約6千円です。

 一方、試し照射後、約1カ月で再発するものはレーザー適応外です。その場合、別の選択肢として手術による切除法があります。大きさにもよりますが、小さいものでは単純切除、少し大きいものでは分割切除(周囲の伸展を待って時期を置いて数回切除)、あるいは周辺の組織を利用する皮弁法などがあります。

 しかし、これらの方法も部位によっては難しい場合があります。専門医の先生にじっくり相談されて、納得のいく治療法を選択されてはいかがでしょうか。

徳島新聞2012年5月27日号より転載

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