徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

【質問】 赤ちゃんに動物の影響は

 生後3カ月の女児の母親です。家で小鳥と猫を飼っています。抵抗力の低い子どもが、動物からの感染症にかからないか心配です。どのような病気があり、どのような対策を取ればいいのでしょうか。



【答え】 人獣共通感染症 -口移しやめ手洗いを-

 ペットが原因で人に感染する病気は「人獣共通感染症」といって、決して少なくありません。私が診察した方で、次のような事例がありました。

 子どもが熱を出して治らないと言って、病院を訪れた親子がいました。家で飼っているインコが弱って死にそうになっているとのことで、子どもの血液検査をしたところ、インコから感染したオウム病クラミジアという病原体による肺炎と分かりました。子どもは、適切な抗菌薬の投与で無事回復しましたが、特にこの病気は、普通の抗菌薬では効かないこともあり、適切な診断と治療が必要です。

 また、鳥による有名な集団感染例としては、島根県の体験型鳥展示・飼育施設「フォーゲルパーク」で、オウム病クラミジア感染が発生し、飼育員5人と来園者11人が集団感染したことがあります。病気のオウムやインコのふんが感染源となったのです。

 近年、世界では死亡率が60%と高い、高病原性鳥インフルエンザ感染が報告されています。飼育鳥については、日本ではニワトリのほかにもチャボやアヒルから、外国ではインコから感染が報告されています。これらの鳥類との濃厚接触は十分に注意すべきです。

 このほか、動物が感染源となるものとしては▽猫による猫ひっかき病▽プレーリードックやリスによる野兎(やと)病▽ミドリガメによるサルモネラ感染症▽犬によるカプノサイトファーガや犬回虫症、狂犬病-などがあります。

 狂犬病は発病すると100%、不幸な転帰をとるといわれています。日本では36年ぶりに2006年、東南アジアから犬にかまれて帰国した人が発病し、死亡したこともありました。犬を飼う人の責務として、狂犬病の予防接種を確実に受け、人に感染しないようにしておいてください。

 カプノサイトファーガ感染症は最近注目されている感染症で、犬や猫の口腔(こうくう)内に常在する菌が原因となります。かまれたり、引っかかれたりすることにより、発熱や頭痛で発症し、敗血症、髄膜炎など重症化しやすい感染症といわれています。生後3カ月のお子さんがおられるようですが、犬や猫などになめられたり、かまれたりしないよう注意しましょう。

 人獣共通感染症を予防するための第一点は“知識のワクチン“です。動物はさまざまな感染症を引き起こす可能性があることを理解し、節度ある触れ合いを心掛けましょう。

 日常的に動物に触れた後は、水道水で結構ですから十分な手洗いをしましょう。また、病原体が直接入らないように口移しの給餌(きゅうじ)はやめ、ふんなどの排泄(はいせつ)物には病原体が付いていることがあるので、処理時に注意を払う必要があります。

 もし、動物と触れ合った後に体の不調を感じたら、ペットの飼育や動物との接触状況を医師に伝えることも適切な対応につながります。また、不幸にして動物が死亡した時や死鳥を見つけた時には、安易に手で触れたりせず、割りばしなどでビニール袋に入れて焼却、埋葬するようにしましょう。

人と動物の主な共通感染症
狂犬病、エキノコックス症、ブルセラ症、パスツレラ症、破傷風、カプノサイトファーガ感染症、回虫症、皮膚糸状菌症
猫ひっかき病、狂犬病、Q熱、パスツレラ症、トキソプラズマ症、カプノサイトファーガ感染症、回虫症、皮膚糸状菌症
ハムスターレプトスピラ症、ハンタウイルス肺症候群、腎症候性出血熱、皮膚糸状菌症、野兎病
オウム病、鳥インフルエンザ
プレーリードック野兎病
節足動物
(ダニ・カ)
日本紅斑熱、つつが虫病、回帰熱、ライム病、エーリキア症、Q熱、日本脳炎、マラリア、デング熱


徳島新聞2012年3月4日号より転載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.