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【質問】 たばこ好きの父の肺に影

 70代の父のことですが、父はたばこを毎日3箱ほど吸います。先日、レントゲン検査で左肺上に影が見つかり、CT画像を取ると約3cmの腫瘍らしきものがありました。診療所では結核かがんか判断できないと言われ、大きい病院で再検査を勧められました。胸の痛みや咳(せき)などの自覚症状はありませんが、最近、血痰(けったん)があり、肺がんではないかと心配です。肺結核でもこうした症状はあるのでしょうか。



【回答】 肺結核と肺がんとの識別 -胸部CT撮影や喀痰検査-

きたじま田岡病院 柳田淳二(板野郡北島町)

 ご質問によると、最近血痰を認めたとのことですが、血痰は、肺や気管支からの出血が咳とともに排泄(はいせつ)されるものです。 排泄(はいせつ)されるものです。

 一方、消化管出血による吐血や鼻出血がのどに落ちて排泄される場合や、口腔(こうくう)内からの出血が睡液(だえき)に混じって排泄された血液を、血痰と勘違いすることがあります。まず、本当に血痰であるかどうかを疑う必要があります。

 肺結核による血痰は、最近は少なくなりましたが皆無ではありません。肺結核の症状は、全身の倦怠感(けんたいかん)および慢性疾患特有の空咳(からせき)に微熱、寝汗、食欲不振などが知らぬ間に現れます。

 肺がんは、自覚症状としては特異的な初期症状はなく、空咳や血痰が先行することもあります。また、喫煙と肺がんの関係に関しては、肺がん患者の85%は喫煙が原因であり、非喫煙者に比べると罹患(りかん)率は10~30倍にもなります。

 ご質問の、左肺の陰影が肺結核か肺がんかを決定するための診断の進め方としては、胸部CT撮影、喀痰(かくたん)検査、気管支鏡検査、CTガイド下肺検査、胸腔(きょうくう)鏡下肺生検、腫瘍(しゅよう)マーカーなどがあります。それぞれの検査の内容を説明します。

 まず、胸部CT撮影についてです。最近のCT機器の進歩と普及によって、肺がんの早期発見が可能になり、病変を詳細に検出するために、2ミリ以下の薄層の画像も撮影可能となっています。このCT画像に写った陰影の内部構造や周辺の所見などから、肺結核か肺がんかをかなりの程度で識別することが可能です。また、最近では「ポジトロン断層・コンピューター断層複合撮影」という撮影法が、肺病巣の良悪性の鑑別に広く応用されています。

 喀痰検査では、細胞診で悪性腫瘍の有無を調べたり、塗沫(とまつ)・培養検査で結核菌を検出したりすることにより、確定診断が可能です。

 気管支鏡検査では、気管支ファイバースコープを用いての肺病変部の気管支洗浄や、肺や気管支の一部を採取しての細胞診および病理組織検査で確定判断を行います。

 また、CT補助下または胸腔鏡を用いて病巣部の肺組織を採取し、病理検査を行うことを、CTガイド下肺生検、胸腔鏡下肺生検といいます。

 腫瘍マーカーとは、がん細胞の存在によって体液中に出現または増加する物質を測定し、がんの存在を推測することで、各種の検査では確定診断が不可能で悪性が強く疑われる病巣に対して行われる検査です。

 以上、簡単に、肺結核と肺がんに対して行われる鑑別診断法についてお答えしました。最近、特に肺がんと喫煙との因果関係が指摘されていることから、早期に専門病院での精密検査をお勧めします。

徳島新聞2009年11月29日号より転載

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