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【質問】 予防接種していないが…

 5歳の子どもの母親です。先日のニュースで、日本脳炎の予防接種が再開されたことを知りました。これまで接種したことがないのですが、どのようなスケジュールで行ったらよいのでしょう。また、安全性の面で問題はないのでしょうか。



【答え】 日本脳炎-希望すれば新ワクチン可能-

ひうら小児科 日浦恭一(徳島市佐古五番町)

 日本脳炎は、コガタアカイエカという蚊によって媒介されるウイルス性の中枢神経感染症です。発病すると死亡率が高く、生存しても重篤な神経後遺症を残す場合が多い病気です。残念ながら、現在でも日本脳炎に対する特別有効な治療法はありません。ですから、予防が最も大切といえます。

 日本脳炎は、1960年代には年間数千人の患者を数えましたが、次第に減少し、過去10年間では58例が報告されています。その大部分は、九州・沖縄地方(38%)と中国・四国地方(40%)での発生です。患者の多くは中高年ですが、2006年には熊本県で3歳児の発生が報告されています。

 従来、わが国で使用されてきた日本脳炎ワクチンは、有効性に優れたワクチンです。しかし、このワクチンはマウス脳を使って作られたもので、マウス脳の組織成分が微量残存している可能性があります。このため、日本脳炎ワクチンの副反応として、急性散在性脳脊髄(せきずい)炎(ADEM)の発生に関係している可能性があるといわれてきました。

 ADEMは、日本脳炎ワクチンだけでなく、麻しん、水ぼうそう、おたふくかぜ、インフルエンザなどの感染後、あるいはワクチン接種後に、数日から2週間程度で現れます。多くのADEMは治療に反応して回復しますが、10%程度、運動障害などの後遺症を残すことがあります。

 日本脳炎ワクチン接種後に、重症のADEMを発症したケースがあったことから、厚生労働省は2005年5月、日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨を差し控えることにしました。つまり多くの方が接種せず、希望者のみ接種できるようになったのです。

 ADEMの発生予防のために、より安全な新ワクチンの開発が急がれました。その結果、マウス脳を使わず、アフリカミドリザルの腎臓に由来した株化細胞を使用した「乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン」が開発され、今年6月初めに発売されました。

 日本脳炎ワクチンは、予防接種法に定められた定期予防接種です。生後6カ月以上90カ月未満、標準として3歳のときが第1期とされていて、1~4週間の間隔を開けて2回接種をし、おおむね1年後に追加接種を1回行います。第2期として9歳以上13歳未満のときに1回接種することになっています。

 今回、新しいワクチンが発売されましたが、厚生労働省は、新ワクチンはその安全性の確認が不十分であるとして、積極的勧奨の差し控えという通達を解除していません。新ワクチンを使用できる対象者は、これまでに1回も日本脳炎ワクチンを接種していない人です。2期は新ワクチンの適応外です。

 質問の方は、日本脳炎ワクチンを1回も接種されていないとのことですから、新ワクチンの接種対象者になります。ワクチン接種を希望する場合には、定期予防接種の接種スケジュールにのっとり、接種を進めることができます。

 なお、新ワクチンの供給量はまだ少なく、どこの医療機関でも、いつでも自由に接種できるとは限りません。主治医の小児科医に相談してみてください。

徳島新聞2009年6月14日号より転載

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