【質問】 BCG接種しても発病?
40代の女性です。最近、相次いで芸能人や医療関係者が結核になったというニュースを見ました。乳児のときにBCGの予防接種をしていても、結核になることはあるのですか。また、結核になった場合、長期隔離されるのでしょうか。診断や治療、予防方法について教えてください。
【答え】 成人の結核-早めの検査・診察心掛けて-
徳島県立中央病院 呼吸器内科 新川邦浩
厚生労働省の調査によると、2007年に国内で発生した結核患者は25,000人を超えており、年間2,000人以上の方が亡くなっています。結核は決して「過去の病気」ではなく、今でも注意すべき疾患であると言えます。
結核菌は、結核患者がせきやくしゃみをしたときに出るしぶき(飛沫(ひまつ))の中に含まれています。周囲の水分が蒸発すると、結核菌は丸裸の状態(飛沫核)になり、長時間空気中を浮遊します。この飛沫核をほかの人が吸い込むことによって、結核に感染します。
結核菌を吸い込んでも、約半数は気道の繊毛運動などで排除されます。残りの半数で感染が成立しますが、多くの場合は自然治癒し、発病するのは5%に過ぎません。ただし、いったん治癒しても、結核菌は体内で冬眠状態となって生き残ります。そのため、免疫力の低下に伴い、さらに5%程度は数年から数十年後に発病してしまいます。
結核の初期症状は、せきやたん、発熱など、風邪の症状とよく似ています。しかし、症状が長引く場合、特にせきが2週間以上続く場合は、早めに医療機関を受診してください。
ちなみに、乳児期に接種されるBCGワクチンの効果は、接種後10~15年しか持たないとされていて、成人での予防効果は高くありません。従って、過去にBCGを接種している人でも結核を発病します。
結核に感染しているのかどうかを調べるためには、ツベルクリン反応検査が有名ですが、これはBCGの影響を受けるため、現在はより精度の高いQFT(クオンティフェロン)という血液検査を行うことが増えてきました。また、結核を発病しているかどうかについては、採取したたんで感染力の強さを調べる塗沫(とまつ)検査、培養検査、遺伝子検査、胸部エックス線検査などで判断します。
塗沫検査で陽性だった場合は、原則、結核病棟への入院が必要です。入院期間についての明確な取り決めはありませんが、1カ月半-4カ月程度になります。
治療は、3~4種類の薬を組み合わせ、最低半年間服用します。早期に発見して治療を開始すれば、ほとんどの場合でよくなりますが服薬を勝手に中断すると、薬が効かない耐性菌が出現する可能性があります。
予防には、普段から免疫力を落とさないような生活を心掛けることが大切です。ご質問にある芸能人のケースについても、過密スケジュールによる睡眠不足や過労などが発病の誘因になったことは想像に難くありません。皆さんも、規則正しい生活を送った上で、怪しいと思った場合には、早めに病院を受診して検査・診察を受けてください。結核について詳しい内容をお知りになりたい方は、最寄りの医療機関や保健所にご相談ください。