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【質問】 禁煙すれば大丈夫?

 65歳男性です。若いころから1日30本前後のたばこを吸っています。先日のテレビで、筑紫哲也キャスターが肺がんにおかされているという衝撃的なニュースを知りました。肺がんはサイレントキラーと呼ばれていて、痛みや自覚症状がないとも聞きました。私は健康診断を受けたことがないのですが、ここ2カ月ぐらい、せきが続いていて気になっています。今から禁煙すれば大丈夫でしょうか。また、禁煙外来とはどのようなことをするのでしょうか。



【答え】 肺がん -65歳までは特に有効-

田岡病院 呼吸器外科部長 森本 広次郎(徳島市東山手町1丁目)

 肺がんの一番の原因はたばこだといわれています。そして、肺がんにかかる危険性は、これまでに吸ったたばこの総量に関係します。

 1日の喫煙本数と喫煙年数をかけた値をブリンクマン指数といい、400を超えると黄信号、600を超えると赤信号です。未成年のころから吸い始めると、さらに危険度は増します。質問の方は1日30本で65歳ですから、20歳から吸っていたとすると30×45で1,350となり、肺がんだけでなく咽頭(こうとう)がんの可能性もある高危険群に属するといえるでしょう。

 このため、今から禁煙すれば大丈夫、とはいえません。しかし、禁煙が危険性を低下させることは間違いありませんし、肺がん以外の疾患の予防にも役立つはずです。

 一般にたばこの害は肺がんだけのように思われがちですが、肺がん以外にも肺気腫(はいきしゅ)や脳卒中、心筋梗塞(しんきんこうそく)などさまざまな疾患の大きな危険因子になります。最近の研究で喫煙男性の40歳時の平均余命は、非喫煙男性よりも3.5年も短いことが報告されました。これは喫煙者の肺がん、肺気腫、脳卒中、心筋梗塞などの罹患率(りかんりつ)が高いためです。

 人生最後の3.5年など大きな差ではないと考える方もおられますが、数字の問題ではなく、人生の質にもかかわります。これらの疾患を発症すると、そのときは致命的ではなくても、それから死亡するまでの数年から数十年、後遺症などで本人や家族の肉体的、精神的苦痛や経済的負担は非常に大きなものとなります。

 以上のことから、質問の方には、ただちに禁煙することをお勧めします。肺がんについては65歳までの禁煙が特に有効といわれていますし、脳卒中や心筋梗塞についても禁煙で大きく危険性が下がることが知られています。ご自身でたばこをやめられない場合、迷わず禁煙外来を受診してください。

 禁煙外来は<1>簡単な質問形式テストでニコチン依存症と診断<2>ブリンクマン指数が200以上<3>禁煙を希望し文書で治療に同意-された方を対象に保険が適用となります。これに当てはまらない方は自費になりますが、大半の成人の喫煙者は保険適用となっています。

 治療はニコチンパッチを軸に呼気中の一酸化炭素濃度の測定や生活習慣のカウンセリングなどを行い、基本的に初診から2、4、8、12週間後の計5回の受診で終了します。これを過ぎると、その後1年間保険適用でなくなり、自費となります。ニコチンパッチは腕、肩、腰などの皮膚に張って血中のニコチン濃度を維持することでニコチン切れの症状を抑えつつ、パッチの容量を徐々に下げて禁煙に導きます。これまでの治療経験からも、パッチを張ったとたんにたばこが欲しくなくなったという方も大勢いて、その効力はかなり信頼性のあるものと考えています。

 さて質問の方はせきが続いているとのことですが、8週間以上の慢性のせきは肺がんだけでなく慢性気管支炎や間質性肺炎、肺結核、気管支異物、胃食道逆流症、薬剤の副作用などの可能性があります。禁煙外来を併設した呼吸器科や呼吸器外科を受診し、精密検査を受けるとよいでしょう。

徳島新聞2007年5月27日号より転載

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