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【質問】 会話や音が聞き取れない

 60代の女性です。6年前、看病疲れからメニエール病になりました。1年くらい、激しい回転性のめまいを繰り返しました。耳の具合はだんだん悪くなり、現在、自分の声や周りの音がこもって頭が痛いくらい強烈に響きます。耳鳴りがし、耳が詰まって頭の中に水を入れたように重苦しいです。テレビの音声や会話などは音として分かりますが、何を言っているかはごく近くでないと聞き取れません。耳管が開放している、といわれたことがあります。この症状を少しでも和らげる方法、治療を受けられる病院などを教えてください。



【答え】 メニエール病 -補聴器で難聴に対応-

山下耳鼻咽喉科クリニック 山下 利幸(吉野川市山川町堤外)

 人とのコミュニケーションが苦痛に満ちたものとなってつらい思いをされていることとお察し致します。今回は既にメニエール病と診断されていますので、これに基づいて回答します。

 メニエール病はめまい、難聴、耳鳴り、耳閉感を主な症状とする内耳の病気です。これらの症状は発作のように繰り返し襲ってきます。

 最初のうちは発作が収まると耳は元の状態に戻りますが、発作を繰り返すとだんだんと難聴が進行して元のようには戻らなくなります。難聴の進行とともに耳は音に過度に敏感となり、音がこもったように聞こえたり、エコーがかかったように頭に反響して会話や生活音にも支障を生じるようになります。そのままにしておくと高度の難聴になり、このころには激しかっためまいもしなくなります。

 以上から相談の女性はメニエール病がかなり進行した状態であるといえます。現在どのような治療を受けておられるのか分かりませんが、私がこの女性の治療を担当すると仮定して以下に対処方法を述べます。

 まず薬物療法ですが、イソバイドというメニエール病の治療薬を投与します。その他、内耳の血流を増やす薬や神経を活性化する薬の投薬を考えます。また、不快な症状により気持ちが落ち込んだり、不安な気持ちを持つこともあるので、精神安定剤や場合によってはうつ病の薬も有効なことがあります。

 また患者とその家族に耳の状態がどうなっているのかについて説明し、状況認識をしてもらい、家族の理解と協力をお願いします。そのほかに現在困っていることや将来の不安を話してもらい、今後どうしていくかについてカウンセリングします。

 また、お困りの難聴についてですが、現在どの程度言葉を聞き取り、判別する能力が残っているかを検査します。そのうえで補聴器の機種を選び、聞きやすいように調節します。最近の補聴器はデジタル技術の向上により、この女性のような難聴にも対応することが可能になってきています。これらの診療には患者の家庭環境や仕事などの情報も重要で、かかりつけ医とめまい専門外来がある総合病院の協力の下で長期にわたり治療する必要があります。

 「耳管が開放している」ということについてですが、耳管は咽頭(いんとう)と中耳をつなぐ管構造です。通常この管は閉じていますが、燕下(えんげ)などで開き、中耳の圧力を調整しています。耳管が完全に開放していることはそれほどありませんが、不十分な閉鎖状態はかなりあります。

 耳閉感、圧迫感、自分の声が大きく聞こえるなどメニエール病と似た症状がありますが、強い難聴はありません。体重減少をきっかけに発病することもあります。薬物療法や手術治療などが行われていますが、今のところ決め手となる治療はありません。

徳島新聞2006年4月16日号より転載

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