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【質問】 ネコから病気が感染

 小学5年生の孫が顔と腕にかゆい湿疹(しっしん)ができたため、皮膚科に行きました。医師はかさぶたを取って、顕微鏡で見て「カビがいますね。家でネコは飼っていませんか」と聞きました。孫はネコを飼っていて、一緒に寝ているようです。診断では、ネコから感染した白癬(はくせん)という病気でした。最近、ペットを飼っている人が多いようですが、ペットから人にうつる皮膚病にはどんなものがあるのでしょうか?



【答え】 ペットと皮膚病 -手洗いなど予防を心掛けて-

徳島大学病院 皮膚科講師 大浦 一

ペットから感染する代表的な皮膚疾患
疾患名
感染源
白癬ネコ、イヌ、
モルモット、ウサギ
疥癬ネコ、イヌ、トリ
ノミ症 ネコ、イヌ
ネコひっかき病ネコ
野兎(やと)病 ウサギ
クリプトコックス症ハト
パスツレラ症ネコ、イヌ
トキソプラズマ症ネコ
スポロトリコーシスネコ、イヌ、ネズミ
非定型抗酸菌症 熱帯魚
 お孫さんの病気は白癬の一つで、Microsporum canis(ミクロスポルム・キャニス)という皮膚糸状菌(カビ)が皮膚に付着して生じたものです。このカビは本来ネコに寄生するもので、ネコにも毛が抜けて白色の鱗屑(りんせつ)(フケのようなもの)の付いた病巣が見られることがあります。人にはネコとの濃厚な接触によって感染します。人に感染した場合は炎症(赤み)とかゆみが強いのが特徴です。

 臨床像、問診からMicrosporum canis感染症と考えられますが、確定診断には病変部から鱗屑を採取し、顕微鏡で皮膚糸状菌を確認する真菌検査が必要です。さらに真菌を培養し、原因となった菌を詳しく調べる場合もあります。

 治療は抗真菌剤の内服や外用(塗り薬)を用いることにより、数週間で治癒します。しかし、ネコも同時に治療しないと人への感染を繰り返す可能性があるので、獣医師に相談して適切な治療を受ける必要があります。

 現在、日本ではペットブームの影響もあってイヌ、ネコをはじめ多くの動物が飼われています。これらのペット動物はコンパニオンアニマル(伴侶(はんりょ)動物)と呼ばれ、室内で飼われることが多く、家族の一員として生活しています。このため濃厚な接触(抱き上げる、ほお擦り、食べ物を口移しで与えるなど)の機会が多く、知らぬ間に動物から人に病気が感染し、しばしば問題を生ずることがあります。

 ペットの感染症には動物同士しかうつらないものと、人にも感染するものとがあり、後者には約300種類のものが知られています。このうちペットから人に感染する代表的な皮膚疾患の一部について説明します。

 白癬はネコやイヌに寄生する皮膚糸状菌の感染により生じ、動物の皮膚症状として脱毛、鱗屑、厚いかさぶたが見られます。また、直接動物に接触する以外に感染動物から散布された菌からの間接感染もあります。屋内に落ちた皮膚糸状菌は長期間感染する能力を保持するので、清掃をまめにすることを勧めます。

 疥癬(かいせん)はイヌやネコに付着したヒゼンダニによって発症します。激しいかゆみを伴い、ペットと接触した部位に赤いぶつぶつや小さな水ぶくれを生じます。

 ネコひっかき病は、ネコに引っかかれた後に熱が出てリンパ節が腫れます。パスツレラ症はネコやイヌにかまれた部位が赤く腫れ上がり、激しい痛みがあります。非定型抗酸菌症は熱帯魚に付着した菌が皮膚に感染して痛みのない発赤、腫れが生じます。

 さらにペットの多様化に伴い、イヌやネコだけでなくカメ、サル、プレーリードッグ、コウモリなどによる咬傷(こうしょう)(かまれて生じた外傷)の報告があり、新しい感染源となる可能性も考えられます。

 ペットから人に感染する皮膚疾患があることを理解し、キスなどの濃厚な接触を避けることや接触後の手洗い、うがいを励行するなどの感染予防を心掛けることが、家族の一員として大切なペットとともに生活していく上で重要であると考えます。

徳島新聞2005年11月6日号より転載

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