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【質問】 頻尿・尿漏れに苦悩の日々

 54歳の女性です。16年前にA型肝炎にかかって、入院しました。2カ月ほどで完治したのですが、それと前後するように膀胱(ぼうこう)炎にかかり体の調子が悪く今も苦しんでいます。肝炎にかかったことと何か関係があるのでしょうか。おしっこの回数は確かに多く、尿漏れもあります。膀胱炎の薬はのんでいますが、よくなったり悪くなったりといった感じです。何かよいアドバイスをお願い致します。



【答え】 反復性膀胱炎 -専門医による精密検査必要-

辻泌尿器科内科クリニック 辻 雅士(小松島市横須町)

 A型肝炎は、A型肝炎ウイルスに汚染された水や魚介類の生食により経口感染し、安静のみで数カ月で治癒します。まれに急性腎不全の原因になりますが、慢性化することはないと考えられます。従って、15年以上経過した現在の膀胱の症状との直接的な因果関係は少ないものと考えられます。

 ご相談の膀胱炎は、細菌感染を伴う細菌性膀胱炎と、感染を伴わない非細菌性膀胱炎に分けられます。細菌性膀胱炎で、膀胱炎症状が長年にわたる抗菌剤の投与にもかかわらず、無効、もしくは再発を繰り返す場合は、尿路結石症や膀胱神経障害などの基礎疾患による複雑性膀胱炎も念頭において、泌尿器科での精密検査が必要になります。

 細菌感染がないのに、頻尿(尿回数が多い)、尿意切迫感(尿意が我慢できない)、失禁(尿が漏れる)、排尿時や蓄尿時(膀胱に尿がたまったとき)の痛みなどの膀胱炎症状が続くような場合は、膀胱粘膜内がん、薬剤性膀胱炎(ぜん息薬や抗がん剤などによる)や間質性膀胱炎などを考えますが、15年以上という長期にわたり症状が持続しているのであれば、間質性膀胱炎が最も疑われます。

 間質性膀胱炎は、最近注目されている病態で、女性に多く、原因としてアレルギーや急性膀胱炎後の自己免疫反応などとの関与が考えられていますが、はっきりした原因は分かっていません。診断は、膀胱の内視鏡検査が必要で、治療法は、薬物療法(内服や膀胱内注入)、水圧拡張術、外科療法などですが、完治が難しい疾患です。

 精密検査の結果、あなたがこの病気であったなら、肝炎にかかったことが、発症のきっかけになった可能性は考えられますが、過去にそのような報告はないようです。

 もし、精密検査の結果、上記の膀胱炎がすべて否定されれば、過活動膀胱を疑います。過活動膀胱は、膀胱の蓄尿障害であり、ある程度尿がたまると、膀胱の不随意な収縮により、尿意切迫感、切迫性尿失禁などの症状が現れます。これは、特に膀胱の神経障害などがない女性でも多く起こり、以前は不安定膀胱と呼ばれていました。この症状は薬物療法、電気刺激療法などにより、比較的良好な改善効果が得られます。

 もう一つ、尿失禁の原因として考えられるのは、腹圧が上昇する動作(せき、くしゃみ、物を持ち上げる、歩行、スポーツなど)のときに起こる腹圧性尿失禁です。これは、中年女性の約25%にあるとされています。治療は、薬物・理学療法(弱った筋肉を強める体操や電気刺激法)、手術療法があります。

 このように、一概に頻尿や失禁といっても、多彩な原因疾患が考えられます。ぜひ、お近くの泌尿器科専門医を受診し、精密検査を受けることをお勧めします。

徳島新聞2004年11月21日号より転載

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