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【質問】 にきびがケロイド状に

 16歳の息子のことで相談します。背中に、にきびがあり、10カ所くらいケロイド状になっています。3カ月ほど前に皮膚科を受診し、内服薬(ルリッド錠、ハイチオール錠)と塗り薬(アクアチムクリーム)を処方されました。だいぶん、よくなりましたが、ケロイド状の部分は治りません。ほかに治療方法はないのでしょうか。



【答え】 肥厚性瘢痕と真性ケロイド -手術や放射線治療の相談を-

徳島大学病院 形成外科 橋本 一郎

 にきびは、医学的には尋常性座瘡(じんじょうせいざそう)と呼ばれ、毛穴からの皮脂分泌が盛んになる思春期以降に、ほお、下あご、胸、そして背中などでみられるようになります。毛穴に皮脂がたまるのが一般的なにきびですが、この状態に細菌感染が加わると、化のうしたにきびになります。

 今回相談の少年は、皮膚科から抗生物質の内服薬と外用剤が処方されていることから、おそらく感染を伴った炎症の強いにきびになっていたものと考えられます。このような状態では、にきびが治癒した後も、皮膚に強い炎症の影響が残ります。

 体は、この炎症を直そうとさまざまな反応を起こしますが、反応が弱い場合には、色素沈着として、強い場合には瘢痕(はんこん)(傷あと)として残ることになります。

 にきびの瘢痕には、2種類のものがあり、陥没してクレーター状に残る場合と、赤く隆起してケロイド状になる場合があります。ケロイド状のものは、拡大と増殖の形態によって肥厚性(ひこうせい)瘢痕と真性ケロイドに大きく分けられます。

 比較的盛り上がる程度が弱く、にきびの大きさを超えないものが肥厚性瘢痕で、治療に反応しやすい性質があります。逆に盛り上がる程度が強く、にきびの範囲を超えて大きくなるのが真性ケロイドで、治療に反応しにくい性質があります。

 また同じようなにきびのあとでも、ケロイドになるとき(部位、人)とならないとき(同)があります。これは、炎症の強さ、患者自身の体質や瘢痕の部位などの要因が違うためです。一般に胸部の中央や背中の肩甲骨部、肩などの骨の突出している部位は、皮膚に緊張が強いため、ケロイドがよくできる部位です。

 ケロイドでは、膠原線維(こうげんせんい)という細胞が過剰に増殖することにより、傷が盛り上がります。白人、黄色人種、黒人の順で多くなるといった人種的な差があることや、性ホルモンに影響されることは分かっていますが、なぜ過剰な増殖が止まらないかは、いまだに分かっていません。

 真性ケロイドがみられる患者は、ケロイド体質があるともいわれ、このことは、ほんのわずかな外傷やにきびでも、真性ケロイドが生じる原因と考えられています。

 このように原因が分かっていないため、治療は主に対症的な療法が行われます。現在行われている治療は、ステロイド局所注射やステロイドテープの外用、シリコンジェルシートの外用、サポーターやスポンジによる圧迫療法のほか、内服薬(リザベン錠)の効果も、最近では注目されています。

 また、症状や発症部位によっては、外科的に切り取る手術療法や放射線治療を行うこともありますが、手術によりさらに大きなケロイドになる可能性や、放射線による副作用の問題もありますので、専門の医師とよく相談することが大切です。

 今回の相談では、肥厚性瘢痕か真性ケロイドかは、文面だけでは分かりませんが、にきびの治療だけではケロイド状の部位は治癒しないと考えられます。現在かかっている皮膚科か形成外科の専門医に相談されることをお勧めします。

徳島新聞2004年8月22日号より転載

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