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【質問】 声のトーンが低下、老化では・・・

 32歳の女性です。ここ1年くらいで声の高さが以前より低くなり、声帯の老化なのかと気にしています。せきやたん、のどに違和感はありませんが、例えればソプラノからアルトへ下がったような感じです。容姿の衰えよりも、本来の声が変化してしまうと考えると耐えられません。肥満の影響もあるのかと思い、節食に努め、体重を落としています。持病もなく健康です。美しい声を維持するのは不可能なのでしょうか。



【答え】 ポリープ様声帯 -声帯粘膜の腫れ切除-

幸田耳鼻咽喉科 幸田 純治(阿南市富岡町今福寺)

 老化により声が変化し、お年寄りの声になるのは周知の事実です。声の高さ、音質、声の響きなどが変化するのですが、声の高さについていえば、加齢により、男性では声が高く、女性では低くなります。しかし、この変化が出てくるのは、女性では閉経期以降です。32歳なら、まだ老化を心配されるような年齢ではありません。肥満で声が低くなることもありません。

 さて、声は声帯が振動して出るものです。この声の高さを左右するのは、声帯の長さ、張り、重さの3つの要素です。これはギターの弦で考えるとよく分かります。弦は短いほど、張り詰めるほど、細く軽いほど、高い音が出ます。声帯も同様で、声帯の短い女性は、声帯の長い男性より高い声が出ます。声帯を張り詰める筋肉を作用させると、さらに高い声が出ます。また声帯にポリープなどができ、声帯が重くなると声は低くなります。

 声が低くなる病気としてまず考えられるのは、ポリープ様声帯です。これは、声帯全体がむくんだように腫れて重くなるために、ガラガラした低い声になる病気です。声帯の一部が、こぶのように腫れる声帯ポリープとは異なる病気です。

 ポリープ様声帯は中年以降の女性に多い病気で、声の乱用や過剰使用が原因となります。また、たばこの吸い過ぎと密接な関係があるともいわれています。

 診断はファイバースコープによる検査で行います。この検査は鼻から4ミリ程度のチューブを入れて声帯を観察するもので、外来で簡単に行えます。ポリープ様声帯の患者では両側の声帯全体がブヨブヨになって見えます。まれに合併症として喉頭(こうとう)がんを引き起こします。

 治療の原則は手術です。全身麻酔で手術を行うため1週間程度の入院が必要になります。手術は声帯にメスを入れ、粘膜の下の腫れた部分を除去するものです。危険な手術ではありませんが、非常に繊細な手術ですので手術用の顕微鏡を使用します。軽症の人では、禁煙の指導や吸入療法で様子を見ることもあります。

 ほかに声が低くなる病気としては、各種のホルモン異常によるものがあります。性ホルモンは、第二次性徴として声変わりを起こすことはよく知られています。この性ホルモンやタンパク同化ステロイドが女性に対するホルモン治療として投与されると、声が男性のように低くなることがあります。これはいったん起きてしまうと治療は困難ですので、予防と早期発見が大切です。そのほか、甲状腺ホルモン、下垂体ホルモン、副腎皮質ホルモンなどの異常でも声が低くなることがあります。

 また女性では月経、妊娠、出産などによる性ホルモンの分泌変動で、微妙に声が変化することがあります。これを無視して以前の感覚でカラオケを歌い、うまく歌えなくなったと訴える人もいます。

 いつまでも美しい声を保つことは豊かな人生を送るためにも大切です。しかし残念ながら、質問の内容だけでは診断はできませんので、声が低くなる病気一般について説明しました。一度近くの耳鼻咽喉科を受診されることをお勧めします。

徳島新聞2003年5月18日号より転載

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