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【質問】 鼻汁でのど周辺に苦味

 40過ぎの女性です。20年以上も前から口臭に悩んでいます。原因として考えられるのは、慢性副鼻腔(びくう)炎のために、よく鼻汁がのどに下りてくることです。鼻汁は透明ですが、よくのどの辺りに苦味を感じます。朝起きたときに最も症状があり、のどの辺りからにおいが上がってきて、歯磨きやうがいをしても効果がありません。耳鼻科で薬を吸入しましたが治りません。どうすれば口臭を消すことができるのでしょうか。もし、鼻が原因でなければ、ほかに何が考えられるでしょうか。



【答え】 副鼻腔炎と口臭 -長期治療になることも-

名手耳鼻咽喉科 院長 金村 章(徳島市東大工町1丁目)

 病的な口臭は、いくつか原因が考えられますが、あなたがおっしゃる通り副鼻腔炎や慢性鼻炎が口臭の原因となることもあります。副鼻腔炎は蓄膿(ちくのう)症とも呼ばれ、その病名の方がなじみ深いかもしれません。

 鼻には、鼻の中の空気の通り道(鼻腔)と、それに連絡する洞穴(副鼻腔)が左右4つあります。健康な状態では、鼻腔から入った空気はスムーズに副鼻腔に流れていきます。

 ところが、ひどい風邪などで鼻腔から副鼻腔にばい菌が入りますと粘膜に炎症が起こり、そこから生じたネバネバした分泌物や膿(うみ)が副鼻腔内にたまります。エックス線撮影すると、本来なら空洞のため黒く写るべきところが、分泌物や膿のため白い陰影となって写し出されます。副鼻腔炎の鼻汁はとても粘り気があって、いくら鼻をかんでもすっきりとしません。

 就寝中に、そのたまった鼻汁がのどに流れ落ちることがあるでしょう。このことからも鼻と口腔はのどの奥の空洞でつながっていることが分かると思います。副鼻腔内にたまった魚や卵の腐ったようなにおいのする鼻汁や膿が、ストレートに吐く息に混じり、口臭となります。

 副鼻腔炎の治療は、鼻の中の分泌物、鼻汁を吸い取り、鼻の中の空気の通りをよくし、ネブライザーで粘膜をきれいにします。同時に抗生物質も服用します。現在はマクロライド系の抗生剤を少量長期間投与(約3カ月)することで、粘膜によい影響が出ています。

 あなたは「鼻汁は透明」とのことですが、流れ出ない副鼻腔内には黄色い膿がたまっているかもしれません。副鼻腔炎は治療が長期にわたることも多く、医者も患者も根気のいる病気です。自己診断で中断することなく、主治医とよく相談して治療を続けてみてください。

 また、鼻以外の口臭の原因として考えられる病的口臭としては、歯周病や歯肉炎などの歯の疾患、または胃腸病、糖尿病による肝炎などが挙げられるでしょう。これらは私の専門外ですが、今挙げた病気は口臭だけではなくそれぞれの症状が出るものです。これらの病気の症状に心当たりがあるのなら、専門医の診療を受けてください。

 口臭にはその他、生理的口臭、心因的口臭があります。朝起きたときの口臭は、睡眠中、唾液(だえき)分泌が少なくなり、口の中の粘膜が乾燥し、残っていた食べ物のかすなどが分解してにおいを発するものです。個人差はあるものの、だれにでもある生理的なものです。また、口臭は精神的に影響される場合もあります。

 長い間悩まされたとは思いますが、一度あなたが一番信頼されている方に、客観的に口臭の有無を確かめてもらうのも一つの方法だと思われます。

徳島新聞2001年11月11日号より転載

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